別れの日

7月3日火曜日・

広日記『3時43分私は昨日23時45分に目覚めてからずっと起きている。そして母に言われた通り、安東先生と安東先生が運営しているカウンセリングセンターの私の担当者狭間田さんとセンターの関係者に向けた謝罪の手紙を書いて書き終えたところだ。謝罪の手紙の内容はこうだ『「安東先生狭間田さんセンター関係の皆様へ」SNSで殺害予告をして信頼を失いまた命を脅かしてしまい心より深く反省しお詫び並びに謝罪を申し上げ致します。危うく近隣の人達まで危害を加えるところでした。SNSのフォローフォロワーの急激な減少により動揺が抑えられず今回皆様と近隣の人達を標的にして大変御迷惑と恐怖や不安を与えましたことを心より深く反省しお詫び並びに謝罪申し上げ致します。この件のようなことは二度と致しません。更生に向けて誠心誠意努めます。』という内容だ』

広日記『7時2分病棟に朝食が届いたアナウンス』

広日記『7時9分朝食が運び込まれる。白米根菜の煮物、きのこの煮物、みそ汁、バナナ、牛乳、お茶。』

広日記『7時35分朝食後の薬を配るアナウンス』

広日記『7時41分朝食完食』

広日記『9時17分成田先生が来て「安東先生と話そう」と言って呼びに来た。ついに時が来た。』

病棟の診察室には主治医安東先生と母海里とナースが待っていた。広はイスに座るように言われ座った。

主治医安東先生「みんな集まったし早速だけど菊川広さんに重要な話しをしたいと思います。今回カウンセリングセンターに殺害予告を出されたのを知り、我々関係者はとても恐かったです。菊川広さんの担当の狭間田さんは殺害予告を受けた日から、まともに夜も眠れずになるほど精神的に不安定になり、センターの方にも来れていません。私も殺害予告を受けた身です。なので菊川広さんの主治医を辞めさせて頂きたいと思います。これまでの期間本当に色々な思い出をありがとう」元主治医安東先生は涙を浮かべながら言った。広は憶測通り安東先生は主治医を辞めたと思った。そして続けて安東先生は「もしセンターに近づいたら警察に通報します。これは我々の身を守る為です。分かるよね広さん。以上、私が伝えたかった事です。質問なんだけど何故我々を標的にしたのかな」

広「SNSのフォロワーが減ってどうしようもない気持ちになって、ちょうど次の日がカウンセリングの日だったから」

安東先生「それで我々を!?フォロワーが減って悲しむのは分かるけど殺意が涌いて我々に向けられるのは分からないな」

広「どうしようもなくて次の日がカウンセリングだったからとしか言い難い」

元主治医安東先生「そっか…。でもなんとなく最後に気持ちが聞けて良かった。もう会う事は無いけどこれからもっと元気になって下さい。これからも広さんを応援してますよ」広と安東先生は握手を交わした。

安東先生「最後に言いたいことはあるかな」

広「そうだこの手紙。謝罪の手紙」広は安東先生に今朝方書いた謝罪の手紙を手渡した。安東先生は手紙を受け取り、これが最後のメッセージなんだと噛締めるように読んだ。

安東先生「確かに広さんの思い受け取りました。では失礼します」そして安東先生は自分のリュックの荷物を置いて診察室を後にした。当然すぐさま、安東先生は戻って来て「私のリュック無い?」と言って来た。そうして小ボケをかました後、本当に広と最後の別れとなり、会うことは無かった。

診察室に残された広達、沈黙が僅かに続き静寂の時が流れる。すると成田先生が沈黙の空気を破るように喋り出した。成田先生「安東先生の伝え言いたかったことは何ですか?」

広「殺害予告をされて恐かったのと、主治医を辞めること、カウンセリングセンターに近づいたら通報するのと、もう会えないこと」

成田先生「立派です。よく話しを理解している。今ショックのこともありましたし、今日退院予定日でしたが気持ちの安静と治療の為もう少し入院と隔離を続けましょう」

海里「それじゃあ何か楽しみになる物を持ち込みたいです。例えば音楽とか。小型音楽再生機で音楽を聴いても良いですか?」

成田先生「それなら良いですよ」

海里「ありがとうございます」

成田先生「それと退院に向けて入院中、これからどう社会に出て行くかなども、考えないといけませんね。私からも以上です。お疲れ様でした」

海里「ありがとうございました」

広「ありがとうがざいます」

広と母海里は1212号室の隔離室に戻った。広日記『10時38分元主治医安東先生とも話して、隔離室に戻ったあと母とも話し終えて一人になった。病棟の診察室には安東先生と母と記録係にだろうかナースさんが待って居た。覚悟して憶測通りだった。安東先生は主治医を辞めること、カウンセリングにはもう来れないということ、重要な話しはそれだった。一生隔離はなかったが、今回の私の殺害予告を受けて、安東先生はじめカウンセリングセンターの人達と私の担当だった狭間田さんは恐かったと言っていた。そして私の担当カウンセラーだった狭間田さんは夜も眠れなくなるほど精神的に不安定になり、もしセンターに近づいたら通報すると安東先生から涙目になりながら言われた。安東先生の話しが終わり、安東先生に私は謝罪の手紙を手渡した。そして安東先生は手紙を読み終わってから「これからもっと元気になって下さい。これからも広さんを応援してますよ」と言って、そして最後握手を交わして安東先生は診察室を後にした。…成田先生「それと退院に向けて入院中、今後どう社会に出て行くかなども、考えないといけませんね」そして成田先生とも話し終え隔離室へ。それで母とも話した。母「安東先生は昨日電話をくれて「広さんのような生い立ちの人の気持ちは分かるけど今回恐い思いをさせられたので主治医を辞めます」って。それと「広さんは敏感な人だからウソはつかず辞めることを素直に言います」ってそう電話くれたの。広は良い先生に恵まれていたんだよ。大切な人を広は縁を切り壊してしまった。でもいつでも手紙書いたら送ってあげるからね。広のこと安東先生は大切に思ってくれていたんだよ」そう母から話しを聞かされて、どんな感情か分からなかったけど自然と私はそこで涙した。今年初めて泣いて母と涙を流した。その後母は小型音楽再生機を持って来るのと、面会時間内になるまで待つ為一度帰宅した。』

広日記『12時5分病棟に昼食が届いたアナウンス』

広日記『12時12分昼食が運び込まれる。白米、鮭、厚揚げ炒め煮、かぶ梅和え、お茶』

広日記『12時45分昼食完食。昼食後の薬を配るのと検温するアナウンス』

広日記『12時57分ナースが検温しに来たと、ちょうどに成田先生も来た。』

成田「ごめんね検温中に。安東先生が主治医を辞めて、菊川さんの今の気持ちが知りたかったんだ」

広「安東先生が主治医を辞める事は数日前から心構え出来ていた。逆に一生隔離が無いことに安心した。だからいつでもココから出られる気でいる。いつでも退院出来る気持ちだ」

成田「それは100%の自信なんだね?」

広「はい」

成田「とりあえず日中隔離室から出られる時間を作るとか、その辺考えておくね」

広「お願いします」広は日記に今の会話を記録した。

広日記『成田先生に私は「安東先生が主治医を辞めることは数日前から心構え…」私は「お願いします」と言った。しかし成田先生に伝え忘れたことが一つあった。安東先生への後悔は無いことを。』

広日記『17時35分二度ナースさんに起こされるのは気付いていたが、昼頃に重たい扉に寄り掛かりながら、すいみん不足もあってか眠って夢を見ていた。夢の内容は、ついにニュースに私が話題になると言う悪夢だ。まどろみの中、夕食を配るアナウンスもあり起きることにした。』

広日記『17時40分夕食運び込まれる。白米、ひれカツ、小松菜サラダ、煮豆、みそ汁、お茶。夕食を運んで来たナースさんに「体調悪そうだね」と言われた。私は「寒い」と言った。しかしナースさんに「空調はついていないみたい」と言われ、私は寝起きだからだろうかと思い、とりあえず心配させまいと眠たいそぶりをした。するとナースさんは「眠たそう」と言って隔離室から出て行った。』

広日記『18時21分白米とひれカツは残すことにした。さすがに寝起きには重たい。それにしても母はもう一度面会に来るはずだが来る気配なし。私と同じく疲れてうたた寝でもしているのだろうか』

広日記『18時25分母面会に来る』

海里「ごめーん帰ってから寝ちゃったから遅くなっちゃった。ママね、寝ている時悪夢見たの。今日は色々あったから疲れたのかもね。それと小型音楽再生機持って来たよ」

広「大丈夫。自分も夕食前まで寝ていた。あと、ありがとう」

広日記『18時28分夕食後の薬を配るアナウンス。やはり母も帰ってから疲れて寝たようだ。そして同じく悪夢まで見た。』

海里「薬来るの遅いね。とりあえず薬来たら病棟内歩こうか」

広「うん」

広日記『18時50分夕食後の薬をナースさん持って来る』

広日記『19時10分病棟内に出歩く』

海里「退院したら何がしたい?」

広「オンラインゲームと正しくSNSを使用して自己発信したい」

広日記『19時50分隔離室に戻る。』

海里「さっき言っていたけどSNSの使い方を改めようとしているんだね」

広「そのことを帰る時にナースさんにも伝えておいて。きっと成田先生にも伝わるはずだから」広は早く通信機器とSNSが使いたかった。

海里「分かった。伝えておいておくね」

広日記『19時55分面会終了まで5分のアナウンス。母と今日も握手して別れた』

広日記『20時・20時過ぎて隔離室で一人、母が持って来た小型音楽再生機で私の好きなシンガーソングライターの歌を聴く。また今年もこの隔離室で彼女の歌を聴くとは思わなかった。』

広日記『20時33分寝る前の薬を配るアナウンス』

広日記『20時40分ナースさんが薬を持って来る』

広日記『21時消灯』

1日が終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る