短冊に願いをそして黄昏た

広日記『16時43分再び母面会に来た』

海里が言った。「家族が居れば隔離室から出て良いらしいよ」広は疑った。さっきまで出る事を許されなくなったばかりなのに、海里は「病棟内に出ようよ」とまで言う。

広「本当に出て良いの?」

海里「良いんだって!今日もお茶買って持って来たから、病棟内歩く時お茶持って歩こう。時間無くなっちゃうよ」広は半信半疑で1212号室の隔離室から精神科病棟に出た。母海里と共に病棟内を歩いた。

海里「広の好きな方向で周って良いよ。好きな所に向かいな。ついて行くから」広は(好きな所って言っても病棟内を歩き周るか、多目的室ぐらいしか行く所は無いだろう)と思い多目的室に向かった。そして多目的室に入った広は海里に「去年に患者さんとこの部屋でドミノ倒ししたんだ。それとマンガを病室に持ち帰って読んだりもしたのが久しぶりに感じるよ」と話した。そうすると海里は苦笑いしながら「そんな事懐かしまなくても良いよ」と言った。そして多目的室に数ある本の内、海里は一冊本を取った。そして広は本を読む気は無く、海里だけが本を熟読していた。しばらく時間が経ち、海里が七夕も近い為に飾られていた笹がある事に気づく。

海里「七夕の笹があるし、せっかくだしお願いを書こうよ」

広「良いよ」

そして2人で短冊に願いを書いた。

広はこんな願いを書いた『SNSが出来たり通信機器の使用禁止の制限が無くなる。退院の日が早く来て隔離室から出れますように。SNSのフォロワーが減ってませんように。』と願いを書いた。そうして2人で多目的室で過ごし時間が過ぎた。すると17時43分・夕食を配るナースの声が聞こえて来た海里は「なんか人の名前呼ぶ声が聞こえる。晩ご飯配っているんじゃない」

広「本当?」

海里「よく耳を澄ましてごらん」海里に言われ耳を澄ましてみる広。

広「本当だ。夕食を受け取りに行こう」多目的室を出て、今回の入院初めて食堂前で食事を受け取る広は、少し嬉しさが心の中で込み上げた。そして隔離室に戻り夕食を食べた。広日記『白米、鶏のねぎ塩焼き、春雨サラダ、みそ汁、リンゴ、お茶』夕食を食べている時に広は海里に今日広が重要な話しと聞いて憶測を広めた内容を語った。すると海里は「その可能性はあるけど広はそれを受け入れるの?」と聞いて来た。広は「受け入れるしかない」と答えた。

広は(それでこれは私のした罪の償いになるだろう)と思った。

しかし海里は「もしそうなったとしても安東先生に診てもらうようにお願いするよ。だって診て来てもらったんだもん」

広「だったら謝罪文を投稿させて欲しい」

広は今なら多少なりとも海里の気持ちに変化を与えられると思った。母海里はついに謝罪文の投稿やめた方が良い理由を述べた。

海里「謝罪文の投稿はやめた方が良い。投稿したら殺害予告を知らなかった人からも言及されかねない。だから殺害予告の件で人から問われたり言及されたら謝れば良いし謝るべき人だけに頭下げて謝るべきだと思う」

広はその言葉を聞き、謝罪したい気持ちは残ったものの投稿をやめた方が良い理由を知り、どこか腑に落ちずいたところが納得出来た。広は19時5分隔離室に戻る時に日記に海里が再び面会に来てからの事を書いた。

広日記『母が言った「家族が居れば隔離室から出られるらしいよ」と…』

広日記『18時10分夕食完食。再び2人で隔離室を出る』

海里「さっきの気晴らしにもう一度病棟内を歩こうよ」

広「うん」

広日記『病棟の中央にナースステーションがあり、ナースステーションを囲む様に病室や各共同に使用出来る部屋や廊下等がある』

広日記『そしてナースステーションを囲むようにある廊下を何週も2人で歩いた。病棟の廊下の窓は大きい窓が二つある。その大きな窓から景色も眺めた。そこには夕陽があった。心までが温かくなったと同時に虚しくもなった。なぜなら夜にはまた隔離室の中だからだ。沈みゆく夕陽を見て黄昏た。最後に去年2017年に姉波音と花火を見た大きな窓から景色を母と見納めた。』

広「もう戻ろう」

海里「もう今日は満足したのね。分かった」

広日記『19時5分隔離室に戻る』

少しして海里が「広が日記を書いているみたいだし帰っちゃうね」

広「うんまたね」

広日記『19時20分母帰宅』

広日記『19時55分面会終了まで5分のアナウンス』

広日記『20時25分隔離室をうろついていたら重たい扉の小窓にナースさんの顔がありビックリした。寝る前の薬を持って来たみたいそして薬を飲んだ。』

ナース「菊川さん驚かしちゃった?ゴメンねお薬持って来ましたよ」

広「本当にビックリしたよハハッ」

広日記『寝る前の薬を配るアナウンス。なぜ先にナースさんは薬を持って来たんだろう。まあ、たまたまか』

広日記『21時消灯・21時10分明かりを消される』そして6月最後の日が終わった。

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