カテイノジジョウ

 幼い頃母を亡くし、父親の実家で育った。

 そして仕事で忙しい父の代わりに、私はほとんど父方の祖父母に育てられた。


 二人にはよく両親の悪口を聞かされた。

 そしてその話を聞くと決まって黙り込む私に、二人は「子供らしくない」とか、「愛嬌がない」とか、散々に文句を言われた。


 一方、肝心の私の唯一の親である父は、私に興味がないらしい。

 そんな父を無責任だと感じつつ、羨ましくも思う。

 そしてしばしば、両親の生殖能力を恨めしく思う。


 そんな環境で育つには、私の精魂はいじらしいほどに“まっすぐ”すぎだったようだ。

 その“まっすぐ”が故に、色んなことを“まっすぐ”に私は受け取り、そんな“まっすぐ”が起因して、見事に“まっすぐ”に屈折した人間に私は育ってしまった。


 そんな私の父は売れない芸人で、お笑いを生業としている。

 くだらないことを言って、くだらないことで笑って、そんな父を見て、私はくだらないと思った。なんて実の無いモノだろうと思う。


 そんなことにかまけているから、母親は亡くなってしまったのだ。

 あぁ、なんてかわいそうな、記憶にはほとんどない私の母親…


 本当は母親の死因なんて知らなかった。

 だけど何となく、父の所為にしている。

 誰もそのことについて話さない。

 

 私のほうこそ、なんだか腫れ物に触るような気がして、話題を出すことすら阻まれた。だから、なんとはなしにそれっきり。


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