4日目 探偵――立花レン -02

「あ、お茶を持ってきますね」


 リビングのソファに座る様に促された後、彼女はそう言って台所へと向かって行った。

 彼女に連れられてきたのは、新しめなマンションであった。その一室に案内されたのだが、結構な広さがあり、そこそこ裕福な家庭であることが推察出来た。


「どうぞ」

「あ、どうも」


 彼女が置いたお茶を飲む。

 美味しい。

 ……じゃなくて。


「では、早速ですが、本題に入りましょう」

「あ、はい。そうですね。レンさん……あ、立花さん」

「外じゃないならレンでいいですよ」

「分かりました。じゃあ、レンさん」


 急な振りであったが、彼女はゆっくりと僕の真正面に座ると、真っ直ぐな瞳を向けてくる。


「実はお話ししたいということは、デスBANのことについてなのです」


 来た。


「実は僕もそれを聞きたかったのです」

「さすが探偵さんですね」


 柔らかく笑むブロードスカヤさん。

 彼女はスカートの裾を直すと、改めて表情を引き締める。


「デスBANについて、正直な話、私は知らないです」

「え……? 知らない」

「はい。ですが――私の知り合いが、どうやら何かを知っている様なのです」


 どういうことだ、と聞く前に彼女から答えが出てきた。だが、それもまた、どういうことだ、と聞きたくなることであった。


「知り合いが?」

「ええ。私の知り合いもVtuberをやっているんです。その人が、その……デスBANの被害にあった人と交流があったみたいなんです」


 それはもしかして――


「『雨下ふらし』さんですか?」


「……そこまで掴んでいたんですね」


 そうです、と彼女は首を縦に動かす。


「どうやら犠牲者の方々と何やらやっていたようなのです。何をやっていたのか、その中身は知りませんが……ですが、近々何かをやろうとしているみたいなのです。それが心配で怖くて、他の人みたいにならないかが」

「……ちょっと待ってください」


 一気に入ってきた情報を一度頭の中で整理する。


「まずは教えてください。どうやってあなたはその雨下さんの情報を得たのですか?」

「それは……はい。それこそが、今回レンさんと実際にお会いしてお話ししたい理由だったのです」


 ぐっ、と裾を握りしめ、ブロードスカヤさんは意を決したように言う。



「ふーちゃん――雨下ふらし君は私の幼馴染で、ちょうどこの上の階にいる男の子なんです」


(上の階の幼馴染……、か)


 リアルで会いたい、ということから予測していたことではあった。

 リアルの人が、同じVtuber。

 そして渦中の人。


「ふーちゃんは何か知っているみたいで、それを今日、生放送でバラすみたいなんです……でも、何か変なことが起こっているし、昨日のネットニュースでその中で本当に死んじゃう人もいたらしいので……」


 やはりあのニュースも見ているか。それ以前から僕に打診していたから、嫌な予感はしていたのだろう。


「レンさん、お願いがあるんです」


 彼女は唐突に僕の手を握ってきた。



「どうか一緒にふーちゃんを説得してもらえませんか?」

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