4日目 探偵――立花レン -01

 ドゥエムマスク。

 なよ。


 この二人が急遽生放送を行い、そしてデスBANの被害に遭った。

 全く同時刻に。

 それだけでも衝撃的だったのに、それを超える事実が伝えられた。


 数日前に報道された、沖縄県で殺害された男性。

 その男性がVtuberだったということ。


 しかも――デスBANに殺害された人物の中の人だったということだ。


 誰なのかは未発表だったとのことだが、時期的に考えて一人しか該当しない。


 ヤエギ。


 彼が殺害された男性だったのだ。

 そうなると関心は当然他の人にも向く。


 綾胸エリ。

 リード・ザーヴェラー。

 ドゥエムマスク。

 なよ。


 この人達も同様にリアルで殺害されているのではないか――と、誰もが思うことだろう。

 実際に死んでいるかどうかなど、彼らのリアルなど知る由もないので当然分からない。

 だが、僕は1人だけリアルを知っている。


 にち・ブロードスカヤ。


 もし次にデスBANの魔の手が襲ってくるならば、彼女の可能性もある。

 それがリアルでの被害になる可能性も――


 だから僕はブロードスカヤさんにリアルで会うことを決めた。

 事件に首を突っ込むというこの選択を愚かだと罵る人もいるだろう。

 だが、何を言われようとも僕は会って話を聞くと決めた。

 身だしなみを整え、彼女が指定した時間、場所で待つ。

 見知らぬ人と会うことに少しそわそわしていた所、数分後に彼女はやってきた。

 大きな目、薄い唇にさらさらの髪――化粧はそれ程していないのに顔立ちが整っているので、人目を一目で引いた。年齢は高校生くらいだろう。

 その顔に見覚えがあった。

 少女は辺りを見回すとスマートフォンを取り出すと耳元に当てる。

 直後、僕のスマートフォンが鳴り出す。

 間違いない。


「お待たせしました」


 通話ボタンを押した後に片手を挙げると、彼女はこちらに気が付いたようで顔を明るくさせた。

 彼女が、にち・ブロードスカヤさんの中の人だ。


「あ、あなたがレンさんですか」

「おっと、その名は外では止めてくださいね」

「あ、すみません」


 目の前の少女は手で口元を押さえる。


「そ、それでは何とお呼びすれば……」

「立花でいいよ」

「あ、はい。では私の方は――とお呼びください」


 彼女は自身の本名を口にしてくる。


「分かりました。――では、どこでお話しします?」

「あ、私の家でお願いします。今日、両親いないので」

「……はい?」

「だから秘密の話でも出来ますよ」


 なんてことを笑顔で言うんだ。言わずもがなだが僕とブロードスカヤさんは男と女だ。この言葉は意味深すぎる。

 だがそんな意図は含んでいないだろう。そして僕もそんなつもりはない。


「分かりました」


 僕は頷いて、導かれるままに彼女の家まで歩いていった。



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