第45話 山中への聴取
山中警部の聴取は荻原邸殺人事件当日から3日たった今でも続いている。
鬼瓦のような面立ちをした大柄の轟警部がどれだけ睨みを効かせようとも山中は常に飄々としてふざけた回答を続けている。
「貴様!いい加減にしろ!」
ズドンと机を叩きつけて轟警部が椅子を吹き飛ばして立ち上がる。
3日も舐めたような態度を取られれば仕方がないだろう。
「いやだねぇ。そんなにかっかしないでくださいよ轟先輩。何も話さないと言っているわけじゃないんですよ。ただ、貴方ではなく、月城警視に……」
「その理由を話せというんだ!」
「それができないんですよねぇ。だから、スムーズに聴取終わらせたいなら月城警視を呼んできてくださいよ」
轟警部は頭の血管が浮き上がるほど怒りを露わにして、聴取を一旦取りやめて部屋から退出してきた。
「くそ!話しにならん!黛、もう限界だ!月城警視は何処におるんだ?お前なら知っとるだろう?」
「知ってはいますよ。ですが……」
「いいから教えろ!ワシが行く!」
「加賀警視正の部屋です」
あまりに圧が強かったので、僕は素直に教えることにした。僕の答えを聞いて轟警部の顔から赤みが消えて頭を掻きだした。
「警視正とは、重要な話をされとるのか?」
「ええ、そのようです。ですので、誰も部屋に寄越さないようにと言われてます」
「……あーわかった!わかった!ならばその話が終わるまで待つ」
「はい。そうしましょう。聴取僕が変わりますよ。お疲れでしょう」
「あ?ああ。なら頼む」
轟警部は依然、頭を掻きむしりながらトイレの方へと歩いていった。
僕は聴取室に入って山中の前に座った。
「黛警部、いくら君がきてもなにもはなさんよ?」
「わかっている。でもそれは赤宮についてだけじゃないか?」
山中は嫌な笑みを浮かべて、流石流石と軽く手を叩いた。
「月城警視の右腕ってだけある。ま、そうだ。直接関係ない話ならしてもいいと言われているからなぁ」
「誰から?」
「兄貴からさ。つっても腹違いのだけどねぇ」
「お前に兄がいたのか」
「ああ。まっ、俺も知ったのは高校卒業前の時だ。兄貴はジョンソンってんだ。母親はアメリカ人だからあんまり似てないけどな。会ったらなんとなく血の繋がりってのを感じたもんだ」
「そうか。……それで、なんだって嫌いな警察官になったんだ?お前は赤宮に協力するためと言っていたが、赤宮の年齢は俺たちより若い。多分だが25歳位だろう?となれば赤宮に協力する為に警察官になったと言うのはおかしな話になるんじゃないのか?」
「ありゃ単にお前を動揺させようとしただけさ。ああ言った方が混乱するだろ?フィクションじゃよくある話だ。ああ、だが警察って組織が嫌いなのは本当だぜぃ?」
「ならなんで警察官になったんだ?わざわざ嫌いな組織に属するなんて理解できないんだがな」
「なんでだったかねぇ?そんな昔のことは忘れちまったよ。ところでよぉ、月城警視は一体どこにいるんだぃ?お前知ってるんだろ?」
「月城警視は現在加賀警視正と会談中だ。しばらくは来ないから大人しく待ってるんだな」
「そうかい。そりゃ待つしかないねぇ」
山中はにやけ顔をやめて、俯き姿勢で静かになった。僕はそれを見ながらただ、この男の末路を考えていた。
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