第33話 緊急会議
捜査本部に刑事たちを集めて緊急会議を開始した。
「全員早急な集合ありがとう。今回、赤宮康介が狙っているターゲットが判明しました。黛君、よろしく」
僕はホワイトボードの前に立ってポケットから手帳を取り出して、一枚の写真をボードにつけた。
「ターゲットは荻原周吾34歳、東京都世田谷区成城在住。今売れている人気俳優で現在山梨県にてドラマ撮影をしているとのことです。明後日から二日間休暇を取っています。荻原氏の自宅周辺を赤宮と大柄の男が偵察している様子が防犯カメラに記録されています。となれば赤宮が狙うとすればこの休暇中であると考えられます」
「ありがとう黛君。さて、こうなると急いで対策を練らなければなりません。何か意見のある者はいますか?」
最前列に座っていた堺警部から手が上がった。僕がどうぞと言うと堺警部は立ち上がって、意見を述べた。
「荻原氏を警察で保護するべきだと考えます。自宅周りは赤宮に知られているわけですから何が何でも殺しに来るでしょう。それならば警察で安全な場所に保護して荻原氏の命を守るべきだと考えます」
堺警部の声に半数の刑事は同意しているようだ。大きく首を縦に振ったり、納得したような顔をしている。そんな中、一番奥の中央に座っていた須藤という刑事が口を開いた。この須藤という人は無口であまり感情を表に出さない。こういう会議でも口を出すようなことはしない人だと記憶している。背は170くらいで目元には昔、とある事件で犯人につけられたという大きな裂傷の跡がくっきりと残っていて、目は細く血走っている。見た目だけで言えば完全に殺人鬼だ。
「俺はそうは思わん。むしろこの機を御生かすべきだ。奴を家の中まで誘い込んでとっ捕まえてしまう方がいいだろう。どうせ荻原ってやつを殺せない状況を作っても奴をのさばらせている限り死人は増える一方だ。それならここで確実に捕まえたほうがよっぽどいい」
この須藤刑事の言うことも間違ってはいない。堺警部も正しいことを言っているように感じる。他の刑事たちもどちらがいいのか考えがまとまらないようだ。
様子を見ていた月城警視が口を開いた。
「私としては、須藤警部補の言う通りだと思います。確かに堺警部の言ったようにかくまって荻原氏の安全を確保することも正しいことです。ですが、情報もつかめず、ずっと赤宮に先手を打たれ、殺人を許してきた私達ですが今回は違います。こちらは万全の構えで赤宮を向かい受けることができるわけです。このようなチャンスはそうない。ここで捕まえるべきでしょう。当然荻原氏の命は守ります。そのために、多くの人員を投入したい。家の付近に機動隊を配置して、室内には我々刑事が6人待機します。過剰と思える人員でしょう。しかし、赤宮と対峙する場合にはこれだけ必要だと考えます。何か異論のあるものはいますか?」
月城警視の考えに異論のあるものはいないようでもう誰も意見をしなくなった。
「では、各自明後日に備えてください。黛君は関係事務所に連絡を。私はこれから記者会見を行う準備をします。大々的に報じて世間に意識させます」
世間が意識すれば、自然と赤宮は下手に動けなくなる。動きを制限できればこちらも守りやすい。
「これで緊急会議を終わります。皆さん。今度こそ赤宮を捉えましょう」
一斉に敬礼。その目には闘志の炎が燃え盛っている。この目をしている刑事からいったい誰が逃げられるだろうか。本当に今回ばかりは赤宮も終わりだろう。そういう気にさせる敬礼であった。
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