第32話 発覚
山中のことは気になるが、今は情報を集めてターゲットの特定を急ぐべきだろう。
捜査本部に戻ると、寄せられた目撃証言一つ一つに目を通した。共通していることは二人組で、一人は大柄で外人っぽい。もう一人は好青年であったということ。そして、何故か周囲を警戒していたというものであった。
ホワイトボードの地図には目撃場所が書き込まれており、おおよそどこに居たのかわかってくる。
「この辺りは成城か……」
成城というと世田谷区の高級住宅街。この辺りに住居を構えている有名人は数人いる。誰もが人気有名人でテレビをつければ必ず見るような人も多い。
そんな中に赤宮が狙うような人間がいるというのか。
「黛君、こちらに来てください」
月城警視に呼ばれて僕は地図から目を離して小走りで向かった。
「はい、何でしょう」
「先ほど入った情報です。君はどう見ます?」
一枚の紙を受け取ってまじまじと見つめる。そこには防犯カメラに映った二人の男性が写っている。一人はガタイのいい大男。もう一人はすらっとした細身の好青年風の男だ。二人は手を挙げている。
「これは、赤宮?もう一人は支援者の一人でしょうか?」
「私もそう思うのです。写っていたのは目撃情報のあった場所から200m離れた位置の防犯カメラ。写っているのはこの一瞬のみで、すぐに体を隠しているようです。どうも私にはわざとやっているように感じるのです。まずこの手を挙げているのはアピールであると考えられます。普通の人ならこんなことはしません。恐らく防犯カメラの位置を確かめている最中なのだと考えられます。恐らく、この防犯カメラがあることは分かっていたが、画角が思っていたより広かったのでしょう。そうでなければカメラに映るようなへまはしないはずです」
「つまり、これで赤宮の目撃証言が確実なものになったという訳ですね」
「そうです。そして防犯カメラを念入りに確認しているということはこの防犯カメラの近くがターゲットの家だと思っていいでしょう」
「それじゃあすぐに堺警部に」
「ええ、お願いしますよ」
僕は携帯を取り出すと堺警部に先ほどの事を話した。
「……ということです。防犯カメラの位置から近い場所にある有名人の家を調べてみてください」
『ああ、ちょっと電話切らずに待っていてください』
電話の奥でキーボードをたたく音が聞こえる。
『わかりました。防犯カメラ近くで調べてみたのですが、一人いましたよ。荻原周吾。今話題の人気俳優、最近じゃあテレビで見ない日はないような奴だ。調べてみると結構黒い噂もあるらしい。とのことで』
黒い噂。赤宮は未解決事件の真犯人や警察も認知していないような時間の犯人を殺害していると考えられる。ということは荻原周吾の黒い噂というのも嘘ではないのだろう。
「多分ターゲットはその人ですね」
『そうに違いないでしょう。警視には伝えておいてください』
「はい。失礼します」
電話を切ると、すぐに月城警視に報告した。
「そうですか。わかりました」
そう言うと、月城警視は緊急会議をすることを告げた。
「本格的に警備の段取りをつけないといけませんからね。確実にここで赤宮を捕らえますよ」
「勿論です」
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