第31話 情報

 捜査本部に戻ってくると堺警部がこちらに走ってきた。僕たちがいない間に捜査に進展があったのだろうか?


「月城警視、ちょうどいいところで戻ってきてくれました。捜査員から情報が。一昨日世田谷区で怪しい二人組を見たという話しがあがってきています」


「本当ですか?では、恐らく赤宮と支援者の一人でしょう。どうやらターゲットの家を下見していたのでしょう」


「それなら防犯カメラをチェックすれば写っているのではないでしょうか?」


「いえ、ここまで長く警察から逃げ切り、殺人を繰り返しているような男です。防犯カメラに映るようなヘマはしないでしょう。ですから堺君、目撃証言をもとに赤宮の狙う有名人を絞り込めないですか?」


「うーん、何とかやってみましょう」


 堺警部は部下を引き連れて調査に向かった。


「これであとは何らかの事件にかかわりがある人物を特定すれば警備を固めて赤宮を捉えられる。今度こそ年貢の納め時ですかね?警視」


「いえ、そううまくはいかないでしょう。あの赤宮の事、もしかしたら警察の包囲網を抜ける策でも講じているかも知れませんからね」


 月城警視の顔は普段の柔らかな表情からは想像できないような恐ろしい顏に変貌していた。赤宮をここで捕まえなければというプレッシャーから来るのか、それとももっと別の思い、理由があるのだろうか。本人ではない自分には想像することしかできないが、明らかに普段とは何か違う。


「何か?」


 いつの間にか警視の方を見てじっと固まっていたようだ。


「い、いえ、何でもありませんよ」


 僕は慌ててごまかした。


「そうですか?疲れているのなら少し休憩しますか?」


「いえ、お気遣いなく。問題ありませんから」


「ならば良いですが、無理だけはしないようにしてください」


「ええ、わかっていますよ。……コーヒーでも飲んできます」


 捜査本部から退出し廊下に出ると遠くに人影が見えた。目を細めてよく見るとどうやら電話をかけているらしい。


「あれは……山中?」


 いったいどこに電話をかけているのだろうか?気になった僕は近づいて話の内容を盗み聞きしようと考えたが、山中はすぐにこちらに気がついて電話を切って逃げるようにどこかへ行ってしまった。


「あいつ、いったい何を……」

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