第30話 正義と悪
未解決事件をしらみ潰しに調べていった結果、これまで赤宮が殺害した人物の中で未解決事件の容疑者候補に上がっていたものは18人を数えた。ここまで多いと偶然では片付けられない。
「殺人の目的は間違いなくこれでしょうね。ですが警視、奴は一体どこでこんな情報を仕入れたのでしょう?殺害している人物からしてそいつが未解決事件の犯人だとは思いますけど」
「それは、彼の協力者に裏社会の情報屋がいるのでしょう。あらゆる事件の情報は裏社会ですぐに出回ると言います。その手の筋さえあれば知ることはそう難しくはないのでしょう」
そうなれば今度は今狙っているターゲットも自然と未解決事件か発覚していない事件の犯人ということなのだろう。
「今のところ、未解決事件の中に有名人の絡んでいる事件はそうありません。まだ発覚していない事件となれば話は別ですがそれを知る術は我々にはありません」
「そうなると相手の出方を待つしかないということですか……」
なんとも情けないような歯痒いような感覚を覚えた。自分で動きたくとも、組織である以上勝手な行動は許されない。
「ええ、さて作戦本部に戻りましょう。しばらく堺くんに任せきりにしていたものですからね」
「そうですね。……月城警視、一ついいですか?」
「なんでしょう?」
「警視は赤宮をどう思いますか?」
月城警視は間を置いてから静かに声を発した。
「黛くんの聞きたいことはわかりますよ。彼のやっている事についてでしょう。ここには君と私以外誰もいないので正直に言いますが、私は警察官ではありますが、完全な正義などないと思っています。正義とは悪の裏返しとはよく言いますが、そうではありません。正義も悪も同じです。違いはその人間のいる立場です。立場が違えば正義は悪となります。ですから、私は自分の信じる正義に従って赤宮を捕まえるだけですよ。警察という組織の正義ではなくね。……さあ行きますよ」
「はい……」
月城警視の考え方はある種の真理なのだと思った。月城警視は自分の中に正しさを持っているのだろう。組織としてそうであるべきと考えていた自分とは違う。
しかしそこで気になった。警視は警察官として出世街道からは離れようとはしていないように感じる。警視は一体何を目指しているのであろうか。
僕は月城警視の後を追った。
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