第28話 眠気
事件の資料を読み漁り続けて既に20時間は経っただろうか。文字にピントが合わなくなっていき、視界が少し歪んできた。少し仮眠を取りたいところなのだが、上司である月城警視が起きている中、部下の自分が寝るということはできない。時代錯誤であることは自分自身でもわかっているが、暗黙のルールというか、なんとも言えない空気が寝たいと言わせない。
「黛くん、そちらは何か成果ありましたか?」
「なーんにもありません!」
勢いよくファイルを閉じて叫ぶと思いっきり伸びをした。
「そうですか……。しかし顔色が悪いですね。少し休みますか?」
「それはありがたいですね。さっきから視界がぼやけてまして……」
「早く言えば良いのですよ。もし赤宮が行動を起こした時、すぐさま現場に直行できるくらいの体力は残しておいてもらわないと困りますからね」
「それはそうですね。……で、なんで警視殿は全く疲れてないんで?」
「疲れてはいますが、3日徹夜くらいなら良くあるので、慣れてしまいました」
「あまり慣れてはいけないと思いますが?」
「ええ、わかってはいます。ですが、慣れてしまったものはどうしようもないですね。とりあえず寝てきてください。私は君が帰ってきた後に仮眠させてもらいます」
「わかりました。ふぁぁ〜。出来るだけ早く戻ります」
資料室から出ると捜査一課の自分のデスクに向かった。窓からは朝日が差し込んでおり、日付も1日過ぎているのを見てどれだけ寝ていないかを実感する。
「黛警部、おはようございます」
一課の刑事が挨拶をしてくれているのだが、誰が誰なのかまるでわからない。声も反響したように聞こえる。
「おう、おはよう。俺は今から寝るぞ」
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えるか?えと、誰だ?」
「茂木です!あと、全く大丈夫に見えません」
「ああ、茂木くんか。悪いな寝てないせいで視界がぐちゃぐちゃなんだ」
「ええ、わかりました。とにかく早く寝てください。目が怖いです」
自分の椅子に座り込むとデスクに顔を突っ伏した。そこから眠るまでは一瞬のことであった。
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