第27話 見えない関係性
堺警部の一報を受けて捜査本部では世田谷区周辺の警戒を強めるとともに、世田谷区に住まいを持つ有名人をリストアップして芸能事務所へも連絡を入れていった。
しかし、問題は人数の多さ。調べてみるとテレビに出演している芸能人で世田谷区に住んでいる人物は数十人はいる。わざわざ犯罪予告めいた手紙を月城警視宛に送ってきた以上、決行までそう時間は残されていない。限られた時間の中でその中から赤宮が狙う人物を特定するのは困難だ。せめてもう少し情報があれば絞りこめそうだ。捜査員がさらなる情報を持ってくることを祈るしかない。
赤宮が殺す相手に何か共通点があればそこから導き出せるのだが、これまでの事件を見てもそんなものは発見されなかった。しかし、赤宮ほど頭の回る犯罪者が無差別連続殺人など行うとは到底思えない。
「黛君、少しいいですか?」
「はい、何ですか?月城警視」
「資料を見に行きます。もう一度赤宮が殺害した人物の関係性を洗います。もう何度もやってきたことではありますが、今回のターゲットを絞るために、調べますよ」
「はい。わかりました」
資料室にはこれまで起きた事件の資料が大量に保管されている。しかし、赤宮の事件を洗いなおすだけでも相当な量の資料を読まなければならない。果たして赤宮が事件を起こす前にすべて読み、関係性を見つけて結び付けるという作業をこなせるのかが問題だ。
「何とかなると思います?」
「やってみないと何とも言えません。しかし、これ以上有力な情報が手に入る可能性は低いと考えていいでしょう。徹夜も覚悟してやるしかありませんよ」
「まあ、そうでしょうね……」
赤宮事件の資料を取り出してデスクに広げた。三年前に起こした最初の事件から順に資料がファイリングされている。
「最初の事件。今から三年前の7月13日。被害者は加藤真55歳。大川製作所に勤務する男。ギャンブルにのめり込んで600万円の借金をしていた。人との関りは殆どなく、会社の人間ですらどういう人物か詳しく知らなかった。遺体が発見されたのは住んでいたアパートの一室。ロープを体の27か所に結び付けてマリオネットのように宙づりにされていた。死因は後頭部を鈍器で殴られたことによる脳出血……。これから始まったんですよね。しかし、殺し方や遺体を芸術作品に見立てるというは最初からですね。それ以外には……」
正直殺された理由がよくわからない。赤宮と関係があるように僕は思えない。
「……とりあえず、全ての事件資料に目を通してから考えましょう」
そこから僕たちは資料に目を通し続けた。殺害されている人物は20代から60代と年齢幅が広く、職種もバラバラ。対人関係を見ても、殺害された人物同士に交流はない。すべて点でしかなく、結び付く線は一つも無いように思う。
「一体何の関係があるんだ……」
「それを解き明かすしかありません。絶対にあるはずです。我々の知らない関係が。今度こそは……」
月城警視ですら今まで見つけ出せないままの関係性を見つけ出すことはできるのだろうか?
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