走る緊張
第26話 鑑定結果
数日が立ち、鑑識からDNA検査の結果が出てきた。結果は赤宮康介のDNAと一致。あの手紙の差出人は赤宮康介であると確定した。
「やはりそうでしたか。後で藤丸君にお礼をしに行かなくてはいけませんね」
「ええ。それより警視、あれから赤宮に関する情報が全くてきませんね」
捜査本部で待機しているが電話が鳴ることはほとんどない。電話がかかっていても大した情報ではない。手紙をよこしてきたのだ。そろそろ赤宮が動き出しても不思議ではない。神奈川県警に協力要請を出し、捜査範囲も大きく広げているというのにだ。僕は少しばかり焦りを感じていた。
「手紙に手掛かりは?」
「ええ、少しありましたよ。これです」
月城警視が見せたのは封筒を切り取ったものだった。そこには何か張り付けてある。
「なんですかこれ?紙ですか?」
「ええ、取って広げてみてください」
写真のモノクロ印刷のようだ。写真には初老男性と男の子が写っているように見えた。
「これはいったい?」
「……さあ、もしかしたら赤宮康介に迫るヒントになるかもしれませんね」
月城警視は僕の手から写真を取るとポケットの中にしまった。
「……警視、何か隠してます?」
なんとなく月城警視の雰囲気、写真を取る態度に違和感を感じた。
「なんでもありません。少し疲れているのかもしれませんね」
警視は誤魔化すように僕に背を向けた。間違いなく警視は何かを知ったのだ。それを言おうとしないのは確証を得られるまで言うべきでないと判断したからなのかもしれない。
僕は月城警視の傍を離れ少し離れた席に座り込んだ。
「お疲れさまです黛警部」
「堺警部、お疲れ様です」
堺警部は手に持った缶コーヒーを僕に差し出した。僕は礼を言い缶を受け取った。
「警視に報告があって戻ってきたんですよ」
「そうですか。何かわかったんですか?」
「目撃情報。なんでも世田谷区の方で似たような顔した男を見たっていう女性がいたんですよ」
「世田谷区……」
「もしかしたら次のターゲットが誰か予想がつくかもしれないですからね」
「そうですね」
「それでは失礼します」
そういうと堺警部は月城警視の元へ歩いて行った。
世田谷区在住の有名人で赤宮のターゲットになりそうな人間とは誰だろうか?コーヒーを飲みながら考えるが全くわからない。そもそも赤宮は何が目的で殺人を犯しているのだろうか。僕は知らなすぎるのではなかろうか。そんな感覚に襲われていた。
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