指名手配犯の隠密行動

第22話 外へ

「何かを成すためには何かを犠牲にしなければならない。成すべき事が大きければ大きいほど犠牲にしなければならないものも大きくなる。わかるか?……まあそのうちわかる時が来るだろう」


 そう言って縁側でタバコをふかしている。

 私はそんな祖父に憧れていた。




 どうやら少し眠ってしまっていたようだ。キーボードに突っ伏して眠っていたからか顔に均等に四角い跡がついている。キーボードに涎でも垂れているのではないかと確認したが全く濡れていない。どうやら問題なさそうである。

 パソコン画面には大量の文字がつらつらと並べられている。

 荻原氏殺害の計画を文章にしていた最中であった事を思い出しすぐさまいらない文字を消していく。


「よお、随分と寝ていたな」


 ニヤニヤと嫌らしい笑顔を浮かべてジョンソン山中が話しかけてきた。


「眠っている事に気がついていたのであれば起こしてくれれば良いものを……」


「気持ちよさそうに寝ていたもんで起こすのが忍びなかっただけだ」


 ジョンソン山中はニヤついた顔を私の顔に近づけてきた。やたらと酒臭い所からしてどうやらだいぶ出来上がっているらしい。

 時刻をみると15時を指している。


「何本ワインをあげたのですか?」


「あっ?軽く4本だ。あーついでにシャンパンも一本開けたぜぇ」


「あいも変わらずよく飲む……」


「んなこたぁいいんだよ。それよりこの1週間何もする事なくて暇すぎだぜ。そろそろイベントが欲しいところだな」


「イベントですか……。そうですね。ならば少し外に出る準備をしてください」


「あ?何考えてんだ?」


「イベントですよ」


「外にでりゃ警察に捕まるだろうが」


「捕まりませんよ。警察は恐らく大田区に集まっているでしょうから。行きますよ」


「ちょっとまて!おい!」


 私はスマホを取り出してエレベーターを起動した。この隠れ家の上は建物の間の暗い隙間である。ネズミやゴキブリがよくいるがそんな事はもう気にならなくなっている。慣れとは怖いものである。

 私がエレベーターに乗り込むと、少し遅れてジョンソン山中が飛び乗った。

 私は一枚の紙を取り出した。


「下見は重要です……」

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