第21話 幸運を……
食事から戻ってくると何故か山中警部が捜査一課に戻ってきていた。
本来なら外で聞き込み捜査をしている筈なのだが……
「何してんだ?」
「お?黛に月城警視ではないですかぁ」
相変わらずなやる気のない喋り方には腹が立つが、感情を抑えて話を聞いてみる。
「今、聞き込みしてる筈だろ?」
「そうだけどもぉ、あんまり意味ないかなぁってね」
ただの職務放棄だろうと突っ込もうとすると月城警視が僕を制して一歩前に出た。
「指示には従ってもらわないと困るんですけどね」
「ええまあそうですが、目撃者はいないですよ」
「そうは言い切れないでしょう?」
「いやぁ、いないですよ。車で移動していて何処かのアジトで潜んでいるとなれば、アジトを探すのが一番でしょう。車内の人間見てる奴なんていないでしょう?」
山中の考えを聞いて月城警視は何故かニヤリと笑った。
「ほう、案外鋭いんですね」
「それを提言しにきたんですよぉ」
「そうですか。私も実は同じ事を考えていました」
「え?そうなんですか」
「ええ、という事で、無線で聞き込みに回っている捜査官に通達しましょう。お願いしますよ黛君」
「は、はい」
「しっかり伝えておくんだぞぉ」
「お前に言われる筋合いはない!」
僕は大型無線機まで走り、通信を繋げた。
「捜査本部黛から捜査員に通達、これより聞き込み捜査の人員を全て赤宮康介のアジト捜索の人員に回すこととなった。アジトの位置は大田区内である可能性が高い。すぐ大田区へ向かい捜査に参加してもらいたい」
通信を終えると既に山中警部の姿はなかった。
「あれ?山中警部は?」
「大田区に向かったのでしょうね。相変わらず不思議な男です」
「ええ、全くその通りで」
月城警視はデスクにつくと手紙を見つめはじめた。
僕も自身のデスクにつくと一枚の紙が置いてあるのが目についた。
裏返してみると山中の独特な字で「GOODLUCK」と書いてあった。
「幸運を……。って、どういう事だよ」
訳がわからず僕は紙をぐしゃぐしゃに丸めるとゴミ箱に投げ捨てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます