第19話 鑑識課・藤丸龍之介
鑑識課に向かうのはあまり気が進まない。
なんせ変人で有名な藤丸龍之介という男がいるからだ。
彼は僕より5歳年下なのだが、常に見下したような喋り方をしてくる、例えが分かりづらい、笑い方が不気味でツボがわからない等々普通の人間には到底理解できない脳を持つ。
しかし、鑑識官としての能力は非常に高く、彼のお陰で事件が解決したということが多々ある。
それ故に赤宮事件には必ず参加するのだ。
僕は鑑識課の扉の前で一つ大きく息を吐いて三度ノックしてドアノブをひねった。
「失礼します。藤丸さんは居ますか?」
「……藤丸、黛警部だ」
デスクで作業をしていた鑑識課長は手を止めることなく藤丸龍之介を呼び出した。
部屋の奥から出てきた彼は天然パーマでもっさりとしている頭を掻いていた。
顔は脂ぎっていて不潔感が漂っている。
「どうも。それで何の用でしょう?」
藤丸龍之介は常に半開きの生気の宿っていなさそうな目をこちらに向けて怠そうにそう言った。
「赤宮からこの封筒が送られてきました。切手は唾液を使って付けられている可能性があるので、DNA鑑定をお願いしたいのですが、できますか?」
「ふむ、赤宮本人が送って来たものかを確かめるわけか。いいでしょうやっておきます。どうせあの警視の指示でしょうから。一週間は時間もらいますよ。こちらも色々と忙しいのでね」
藤丸は差し出した封筒を受け取るとそそくさと部屋の奥へと戻った。
「失礼しました」
用事が済んだ僕は鑑識課から出てまた大きく息を吐いた。
「あいも変わらずムカつく奴だ」
僕は捜査一課へと早足で戻った。
捜査一課に戻ると月城警視はデスクで顎に手を当て何やら考えていた。
「どうしたんですか?」
「ああ、黛くん戻りましたか。いえ、別に何でもありませんよ」
この人が何でもないという時は考えがまとまっておらず真相を解明できていない時だ。
今回の場合は手紙から赤宮の考えを読み取ろうとしているのだ。
「はあ、そうですか。……鑑識の藤丸龍之介にDNA鑑定頼んできました。一週間程度時間をもらうとのことです」
「そうですか。本当なら早急に鑑定結果を知りたいところですが、彼らも忙しいでしょうから仕方がありませんね」
月城警視は再び手紙に目を向けた。
このままここにいても邪魔になるだけだと判断した僕はコーヒーメーカーでコーヒーを入れて自分のデスクに戻り、藤丸龍之介のせいで受けたストレスを少し解消することにした。
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