月城才児の熟考
第18話 手紙
4月12日
事件から3日経ったのだが、未だに赤宮康介の目撃情報も赤宮を支援する裏社会の人間達も見つかってはいなかった。
相当数を動員して厳重警戒に当たっていて赤宮が動けない今のうちにアジトを制圧し、赤宮を捉えねばならない。
月城警視は焦らずじっくり行きましょう、焦っても仕方がありませんと部下たちに言い聞かせてデスクでコーヒーを飲みながら資料を眺めている。
わざわざ何の資料を見ているのかを聞くのも悪いのでなにも聞かないが、月城警視の顔は険しくなっている。
大概そういう時は考え事をしている時だ。
僕はしばらく電話を眺めていたが、電話がかかってくることも無く暇になりだしていた。
大した睡眠も取らずに3日間警視庁にいたおかげで凄まじい眠気に襲われている。
トイレにも行きたいしとても臭いので風呂に入りたい。できることなら1日中寝ていたいと思うがそういうわけにもいかない。
とりあえずトイレにでも行こうと席を立ち、部屋を出ると部下の刑事が大慌てで走ってきた。
「どうしたんだ?そんなに急いで」
「あ、黛警部!それが、これが月城警視宛に」
刑事が持っていたのは一通の手紙だった。
差出人は……
「赤宮……康介」
部下に月城警視に手紙を届けさせた僕はトイレを急いで済ませて月城警視の元に向かった。
月城警視は手紙を封筒から出して読んでいた。
「警視。封筒の中身は何だったのですか?」
「黛君。まあ、これを見てください」
月城警視は多くを語らず手紙を僕に手渡した。
「警視庁捜査一課月城才児殿
今回の作品は如何だったでしょうか?
あの部屋に似つかわしくない家具が私の作品までもを汚すというのは我慢ならなかったのですが、作品自体だけみれば素晴らしいでしょう?
さて、今回は少しだけ、次の作品のヒントを与えましょう。
次の作品は都内在住の有名人。今日の作品より素晴らしい作品をお見せできるでしょう。
記念すべき30作品目です。見に来てくださいますよね?
私をもっと楽しませてください。
『血の芸術家』赤宮康介」
「君はどう捉えます?」
「どう考えても宣戦布告でしょう。こんなの」
「ええ、それもあるでしょうが、こちらを混乱させようという目的もあるでしょう」
「どういうことですか?」
「この手紙は30人目、この人物の名前を伏せることで人物の特定を困難にさせ、我々の警備を薄くするつもりでしょうね。とにかく頭の切れる男です。全く油断できませんね。悪戯の可能性もあるので念のためですが、黛警部、切手に唾液がついてると思うのでそれをDNA鑑定に出しておいてください。対応は今から決めます」
「わかりました」
僕は封筒を受け取ると鑑識課へ走った。
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