第17話 赤宮の秘密と秘密ファイル

 私は封筒に切手を唾液で貼り付けた。


「おいおい、唾でつけていいのか?」


「ええ、私の名前は今や全国的に知られています。私以外の者が私の名を名乗り手紙を出してきたと思われる可能性があります。警視庁には私のDNAデータがあるでしょうから、私のDNAが採取できる唾液が切手からでれば私本人の手紙であると確信をもってくれるでしょう。これは月城警視の目に届かないと意味がありませんからね。……さて、ではジョンソン山中。この封筒に宛名と私の名前を書いてポストに投函してきてください。ああ、あとついでに買い出しもねお願いします。警察に顔を知られていない貴方にしかできませんから」


 私はジョンソン山中に手紙を差し出した。


「あ?なんだって俺が書く必要があるんだよ?」


「筆跡はばれたくないんですよ。月城警視なら筆跡だけで私の正体にたどり着きかねない」


「ッチ……仕方がねぇな。あとで買い出し分の金は貰うぞ?」


「構いませんよ」


 ジョンソン山中はだるそうに封筒を受け取ると隠れ家から出て行った。


「さて、一人になれた事ですし……」


 私は再びパソコンに目を移し、【2008年 極秘ファイル】を開いた。


 2008年6月13日

 東京都品川区品川駅付近のネットカフェで空野景隆を見たという情報が入る。

 ネットカフェの防犯カメラに姿が捉えられていた。


 2008年6月15日

 空野景隆を見つけ出したが、サクラを発砲され逃げられる。この時、棚橋巡査部長が足に怪我を負う。


 2008年6月18日

 夜19時18分、東京湾フェリーターミナルビルから徳島行きフェリーに乗ろうとしていた所を山寺警部と月城警部補両名が確保。

 空野景隆の持っていた鞄に入っていたのは現金2041円の入った財布と警官から奪ったサクラとニューナンブM60だけであった。二丁の銃には弾薬は込められていなかった。


 空野景隆大量殺人事件はここまでだ。スクロールして次の事件を見ようとしたがやはりやめておく事にした。

 あまり見たいものではない。それは私がそういう運命にある人間だからだ。

 運命などという言葉を使って表現するのは臭いと思うかもしれないが実際運命というしかない。

 私は一息ふぅとため息をついてファイルを消した。


「……さて、少し休みますかね。月城警視に手紙が届くまで暇でしょうし」


 私は部屋の左隅に置いてある布団を敷くと横になって仮眠をとる事にした。

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