第15話 シュミレーション
30人目が決まり、私は作品作りの準備を始める。
短時間で作品を作り上げるためにターゲットの住処の調査や逃走経路の確保、使用物資の確認をしなければならない。
さらに今回の作品は手が込んだものになる都合上、人形を使って練習する必要があるだろう。
「さて、忙しくなってきましたね」
私は部屋の隅に置いてある60kgあるかなりリアルな人形を取り出した。このような事がたまにあるので念のために買っておいたものだ。
「これ使うの3回目くらいじゃねぇか?」
「そうですね。ちょうど1年前に使ったきり放置していましたが、まさかまた役に立つ時が来るとは思ってもいませんでした」
「全く邪魔くさいってんだよ。でかいし重いしよぉ。何度捨ててやろうかと思ったことか」
「それはすみません。さて、まあそんな事はさておき、ちょっとイメージを形にしてみましょうかね」
私はスマホのストップウォッチ機能を起動すると、人形を60kgを吊り下げる事ができる丈夫で透明な特製の紐を腹部に巻きつけると、天井の木製の柱に結びつけて吊るした。
そのあと、一本の投げナイフからワイヤーを伸ばして人形の右肘にくくりつけると、次にもう一本のナイフから同様にワイヤーを伸ばして右膝にくくりつけると天井に固定してある柱ににナイフを突き刺す。
次にピアノ線を取り出すと頭、首、胸部、腹部、左手、右手、左足首にくくりつけて天井に取り付ける。
足の向きや、腕の角度などを微調整して完成した。
腕や足はおかしな方向に曲がっているその姿は無残だった。
「ほぉう?こうなるのか」
ジョンソン山中は興味深そうに吊り下げられた人形を見ながら言った。
「ええ、まあこんなものですよ。しかし、微調整に時間がかかりますね」
ストップウォッチを止めてから見ると10分3秒となっていた。
「止めるまでに1分ほどラグがありましたのでそれを差っ引いても9分はかかってますね。これにターゲットを気絶させる時間や荷物を取り出す時間、最後の仕上げを考えると15分ほどかかるでしょうかね」
「結構かかるな」
「ええ、練習をすればもう少し時間短縮はできるかと思いますが、できたとしても1分ほどが限度でしょう。それに、ターゲットは生きた人間ですから人形のようにはいきません。下手をすれば目算より時間がかかる可能性もあります。警戒態勢は続くでしょうし今の段階では犯行不可能ですね」
「こんな事で大丈夫なのかよ?えぇ?」
「大丈夫ですよ。その時間は厄介なターゲットの情報集めができますから無駄ではありません」
人形を降ろし、紐やワイヤーを解いて片付けた。
「さて、ジョンソン山中。ターゲットの身辺調査を駿河さんに依頼してもらえませんか?」
「あ?駿河って言やぁ芸能事務所にいるあのおっさんか?」
「ええ、彼ならターゲットに接触できるでしょうし、スケジュールもわかるでしょう」
「わぁーったよ。依頼しとくさ。これも俺の金の為だ」
やはり彼のモチベーションは金か。今日作った作品で得られる金のうち何割渡すことになるのだか。あまり考えたくはないのだが。
私はノートパソコンを開くと起動スイッチを押した。
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