『血の芸術家』赤宮康介事件捜査会議

第10話 帰還と招集

 10時


 コーヒーチェーン店から出てから僕たちは警視庁へと戻ってきた。


「さて、これからどうするんです?」


 この赤宮関連の事件は全て月城警視に一任されている。

 捜査の方針を決めるのも、捜査会議を仕切るのも全てこの人。基本は月城警視に全て確認をとり行動するのだ。


「そうですね……黛警部、14時から捜査会議をします。連絡をしてください。ああ、境警部と矢田丘警部補、坂下警部補には早めに来てほしいと言っておいてください」


 境警部、矢田丘警部補、坂下警部補は皆32歳の刑事である。

 この三人は赤宮の事件に最初から携わっており、基本三人一組で行動し、境警部が三人の中ではリーダーである。赤宮の支援者を何人も逮捕している月城警視の優秀な部下だ。

 一応、今は僕が右腕となっているが、前はこの三人が右腕的存在であった。


「その三人に何かさせたんですか?僕の知らぬ間に」


「ええ、以前『血の芸術家事件』にてあと一歩まで追い詰めました。そろそろ逃げ方を変えるだろうとは予想できていましたので一応念のためですが、あの事件が起きてすぐに現場付近を見張らせていました。恐らく赤宮の車を追跡できていると思います」


「そんなことさせていたんですか」


「言ったでしょう?私も後がないのですよ。まあ彼らなら間違いなく何か成果を上げてきますよ」


 僕たちは捜査一課へ戻ってきた。


「帰りましたよ」


「お疲れ様です警視」

「月城警視、黛警部お疲れ様です」


 捜査一課の刑事たちが僕たちに声をかける。


「やはり赤宮ですか?」


「ええ、この後14時から捜査会議ですよ」


 自分の席に着くと、警視はコーヒーを、僕は水筒を取り出してお茶を飲んだ。

 鑑識の仕事が終わっていたとはいえ、きついものを見た後はやはり後味悪い。


 僕は携帯を取り出すと、境警部に連絡を入れた。


「もしもし、黛です」


『ああ、お疲れさまです。境です』


 境警部は爽やかな透き通った声が電話越しに聞こえる。

 性格は優しくも厳しい。とりあえず怒らせると鬼のようだと言う。

 怒ったところを見たことがないためよく知らないのだが。


「今日の14時から捜査会議を行います。境警部、矢田丘警部補、坂下警部補は早めに会議室まで来てください」


『了解した。もう少しパトロールしてから帰ります』


「はいわかりました。お願いします」


 ピッ……


 僕は電話を切ると少しばかり落ち着いて座っていることにした。

 操作が始まれはそうそう家には帰れなくなり、寝る時間もなくなる。僕は今のうちに休めるだけ休むことにした。

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