支援者
第7話 逃走
8時10分頃、殺害現場の高層マンションに一台のパトカーがやってきた。
パトカーからは茶髪で眼鏡をかけたいかにもイケメンという雰囲気の刑事と背の高い切れ目の刑事が出てきた。
「警視庁一の切れ者、到着ですか……。最近は私の事件となるとこの二人が必ずきますねぇ。以前は月城警視だけでしたが……」
月城警視ともう一人の刑事、黛警部はマンション内に入って現場検証をするだろう。となるとそうそう出てこない。
私は車にエンジンをかけてそうそうに現場を離れた。
本来は同じ場所にとどまって月城警視の動向を伺ってからその裏をかいて逃げ切るが、もうそろそろこの手も使えないだろう。事実、最近何度か私は捕まりかけている。
その度に私に協力的な者たちのお陰で助かってきただけに過ぎない。
私は車を走らせて大田区の秘密の場所へと向かった。
秘密の場所。
というだけありその場所は私と支援者しか知らない。
私は車庫に偽装してある車用エレベーターで地下5階まで降りていく。
地下には車を8台まで止められる駐車場がある。私はそこに車を止めた。
鉄扉を開けて駐車場の先に進むと10畳ほどの広間がある。
真ん中には大きなテーブルと8席分の質素な椅子、入って右にキッチンがあり、冷蔵庫の中身は食料品が入っている。冷蔵庫の横には小型のワインセラー、食器棚がある。
左側には60インチの液晶テレビがある。
テレビボードにはさまざまなジャンルの映画のブルーレイディスクが置いてある。
コンクリートむき出しの壁は私の趣味には合わないが、身を隠せるなら我慢できる。
「おう、今日は早い事きたな?てめぇは毎回毎回慎重すぎるんだよ。おかげで最近は大変だったぜ?」
大きな机の上にワイングラスとドンペリを出して何かを見ながら一人飲んでいるガタイのいい色黒の男がいた。
「それは申し訳ない。ジョンソン山中」
ジョンソン山中は私の支援者の元締めとして働いてもらっているいわば私の右腕的存在である。
事あるごとに彼に助けられている。毎回捕まらずに逃げられるのも彼の協力あってこそだったことは何度もある。
「とりあえず今日のところはうまく逃げきれそうだから良しとしてやる。そのかわり、てめぇが大切にしていたこのドンペリは貰ったぜ?」
「ええ。構いませんよ。貴方のおかげでここまで長い間外に居られるわけですからね」
「そうだよなぁ?まだ捕まるわけにゃいかねぇんだろう?これくらい当然だよなぁ?」
「ええ。まだ私の求める最高の作品は出来上がっていません。それができるまでは捕まるわけにはいかないですね。貴方のいう通りだ」
「そうだぜ?でなきゃ俺の稼ぎも減るんでな。てめぇの作品が好きな多くの人間は沢山いるからなぁ。そいつらから金まきあげられなくなっちまう」
この男は金の為ならどんな苦労もいとわないほどの金好きだ。その金への執着には私も絶句するほどだ。
「ま、とりあえずしばらくはここで大人しくしてるんだな」
「ええ、そうさせてもらいますよ……」
私は椅子に腰掛けるとテレビをつけてニュースを見ることにした。
私の事件となれば相当メディアが騒ぐはずだ。事件の概要はどんどん入ってくる。
ここからはテレビの情報を元に動きを決めることにした。
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