第5話 防犯カメラ

 検証を終えて、現場の部屋まで戻ってきた。


「5往復して、最速が一番最初の3分45秒、最遅さいちは3回目の4分21秒ですね。……それで、月城警視?なんでわざわざ調べたんですか?こんな検証しなくても防犯カメラの映像で移動時間くらいわかると思うんですけど?」


 高層ビルを走って上って走って降りてを繰り返し疲れた僕はずっと思っていたことを言った。


「念のためです。もし、防犯カメラに映っていない部分があれば、正確な時間を測れません」


「そうですか……。そもそもですけど、これら調べてなんか意味あります?」


「……勿論ありますよ」


 月城警視は意味深げに話したが、本当に意味があるのか怪しいところだ。


「なら、良いんですけど……。それじゃ、防犯カメラを見に行きましょうかね。警備室は一階ですってよ?」


「そうですか、それじゃあまた降りなければなりませんね」


「ええ、さあ、とっとと行きましょう。警備員が随分と待ってるみたいですよ?」


「それは申し訳ないですね。行きましょう」



 最上階から一階に降りると、左に行くと中肉中背で丸眼鏡をかけた中年の警備員が立っていた。


「おはようございます。今回の事件を担当しております警視庁捜査一課警視の月城才児です」


「同じく警視庁捜査一課警部の黛です。ここで警備員をやっている滝さんですね?」


「はいそうです。どうぞこちらへ」


 警備室の中にはデスクが4台あり、ドアのすぐ横の壁には警備員の巡回時間と通勤日が書いてある。

 正面には冷蔵庫、その横には電子レンジとポットがあり、小さな机の上にはインスタントコーヒーやココア、紅茶にお菓子類が置いてあり、奥には流し場がある。


「とても良い環境ですね」


「ええ、流石は高級高層マンションの警備室ってとこですね。……うちらより仕事環境良くないっすか?」


「……黛くん、それは言ってはいけません。あと、言うのであれば小声で言いましょうね?」


 僕達のやり取りを滝警備員は苦笑いで眺めたいる。

 僕達は真剣な表情で捜査に専念する。


「では、本日の7時20分ほどから再生してくれませんか?」


「わかりました」



 8台のモニターに玄関、一階エレベーターホール、エレベーター内、最上階エレベーターホール、最上階の3台の映像が投影された。


「……早送りしましょうか?」


「いえ、問題ありません。すぐに奴は現れます」


「流石に何年も追っかけてるだけありますね」


「褒められても複雑ですよ。さ、きましたよ。このパーカーを着た男、この男が赤宮康介です」


「またいつも通りの格好してきたわけですね……」


「まあ、指名手配犯ですし、裏社会とのつながりも深い、それに、犯行手口ですぐ自分だとバレてしまう。そうなれば、わざわざ隠す必要はないわけです。パーカーはトラブルを防ぐための保険でしょう。住民に顔を見られるのはまずいですからね」


 赤宮は玄関のロックをいとも簡単に解除すると歩いてエレベーターホールに向かう。

 エレベーターホールでエレベーターを20秒ほど待ち、エレベーターに入ると最上階へと上がっていった。

 エレベーター内では特に何もせず壁に寄りかかっている。まったく何も考えていないような自然な感じがする。

 赤宮は最上階に到着し、そのまま犯行現場へ歩いて行った。


「この後、蒲田を殺害して恐らく7時50分くらいに……」


 早送りすると7時50分に赤宮が廊下に現れた。


「月城警視の言う通りですね」


「まあ、このくらいなら予想できますよ」


 見ていると、赤宮は焦ることなく来た道を歩いてマンションを出て行った。


「映っているのはここまでですか?」


「ええ、私どもも確認しましたがこれ以降は確認できません」


「そうですか。ありがとうございます。行きますよ黛くん」


「はい」


 警備室から出ると月城警視について玄関からマンションからでた。


「これからどうするんですか?」


「そうですね……。そこら辺のカフェにでも行きましょう。奢りますから」


「公務中ですけど?」


「バレなければ問題ありません」


「警視がそれでいいんすか?」


「構いませんよ。ちょっと怒られる程度です」


「お気楽なことで……」


「さ、行きますよ」


 警視のことなので恐らく考えがあってのことだろう。

 僕達はカフェを探して歩き始めた。

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