6話「新たな決意を胸に」
それから時間は経ち、お昼休みとなっていた。今日も既に半日が経過したが、相変わらず私と
「――ねえ、ちょっといい?」
いいタイミングのところで、私がそう話を切り出す。自分から人に煉のことを訊く、というのはちょっと恥ずかしいけれど、これも『私のため』と言い聞かせ勇気を振り絞る。
「ん、何々?」
「そのー……
そんなことを訊いている自分が客観的にみて、ともて恥ずかしく思えて、まともに静ちゃんたちの目を見れずにそんな話題を振る。
「んー……学園の人気者?」
その質問に、ちょっと考えるような仕草をして静ちゃんはそう答える。
「へーそうなんだー」
たしかに、まだ1日半ぐらいしか煉の学園での姿を見ていないけれど、そう言われるだけの
「男子で唯一ファンクラブ持ちだしねー」
そんなことを考えいる中、今度は
「ファ、ファンクラブ!? そんなのあるの?」
私はその言葉に、ただただ
「うん、生徒会の副会長に『
「へ、へぇー」
ファンクラブは『勢い余って』作れてしまうものなのだろうか。もちろん、芸能人のそれほどきっちりとしたものではないのだろうけど、それを作ってしまうほどの生徒会副会長さんがどんな人なのか、興味が湧いてくる。
「ちなみに、女子の方だとファンクラブ持ちってあんま珍しくないよ」
これだけの事実で驚きまくっている私に、さらに静ちゃんは補足をするように、私を驚かせるそんな発言をする。
「えっ、そうなの?」
「うん、その凛先輩もそうだし、あともう1人の副会長の
男子はやはりこういうことには熱心なのか、ズラズラと女子の名前がいい連ねられていく。ということは、それほどまでにこの学園には美人さんが多いということなのだろう。たしかに、女の私でも『可愛いな』と思うような生徒を目にすることが結構あるかも。
「学園のアイドル……なんかすごいね」
それにしても私が前にいた学校にはこんな文化はなかったから、なんか圧倒されてしまう。それに、そんな『通称』みたいなのがあるというのも、なんか漫画の世界みたいでちょっと不思議な感覚だ。
「あっ、でも本人は嫌がってるみたいだから、本人の前でこの話題はしないほうがいいよ」
確かに汐月さんって大人しい感じだし、そういう周りから
「うん、気をつける。で、話それちゃったけど、後は?」
今のところ、まだ煉がファンクラブを持っていて人気だ、という情報しか得られていない。もっともっと煉のことを知りたい、知らなくちゃいけない。だから静ちゃんたちにさらに詳しい情報を訊いてみる。
「あとはー頭いいとかー……あっ、スポーツも得意だね!」
文武両道で、顔もよくて、性格もいい。なんか自分の恋している人がものすごい存在になっている気がする。これだけ聞くと、煉は弱点のない完璧超人みたいだ。子供の頃なんて、たしかに運動は得意だったけど、頭の良さまではわからなかったし。やっぱりあの頃とだいぶ変わっているんだな、と改めて実感する。
「……でもどうしてそんな――おやおや? もしかして気になる?」
そんな煉のことをばかり訊いてくる私を不思議に思ったのか、怪訝そうな顔をする。そこから2人とも目を見合わせて、目線だけで何か会話をして意思疎通をしたようで、同じタイミングで私を見てそんなニヤニヤした表情を見せていた。
「えっ、あっ、まあ……」
だいぶ恥ずかしいけど、まさかここでバカ正直に煉とのことを話すわけにもいかないので、そんな感じで照れながらはぐらかす。間違ってはいないけど、これだと2人に昨日転校してきて、煉に一目惚れした人みたいに思われているかも。
「そっかそっか! でもさっきも言ったけど、煉くんファンクラブ持ちだし、競争率高いよー?」
そう、静ちゃんの言う通り、今の煉と結ばれるのはかなり至難の
「でも……私なりに頑張りたいんだ」
それでも私は諦めたくない。この『好き』という気持ちを絶対に無駄にしたくはない。たぶんその気持ちは他の誰よりも負けないと思う。
「そっか。じゃあ、私たちも応援するよ! どれだけの力になれるかはわからないけど」
「うん、ありがと」
それから私は静ちゃんたちから煉の情報を聞いていた。基本的にそれは付属の時のエピソードが多く、私もその中に入れたらな、なんて思ってしまう。でもこれは、煉のほんの一部にすぎない。ホントはもっともっと知らないことがたくさんあるんだ。その穴を埋めつつ、いい加減に煉と話せるようになりたいと、思う昼下がりであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます