01-09 チュートリアル その03



「ん? やっぱりあるよな……」


 少し歩いていると、いきなり目の前にこんなものがUIユーザーインターフェイスとして現れる──


===============================

警告:ここより先では、エリア解放戦が行われます

未討伐のため、強化体が出現します


    本当に挑みますか?

   〔はい〕  〔いいえ〕

===============================


 ――もちろん答えは〔はい〕だ。

 さっそく戦闘を始めるとしようか。


 スキルも初期の状態に戻してあり、戦闘への意欲も溢れ出るほどある。


「はてさて、何が出てくるんだか……」


 そんなことを考えながら、俺は〔はい〕を押した。






 すると突然、大気が震え出してそいつ・・・がこの場所に降り立った。

 

『GUGYAAAAAAAAA!!』


 視界いっぱいに広がる爪がついた翼。

 動くたびに激しい音が鳴る尻尾。

 鋭く尖り、獰猛さを表す牙。


 俺のファンタジー知識が正しいなら……間違いない、こいつは亜竜ワイバーンだ。


「ね、念のため鑑定を──」


 ??? ???

 ??? ???

 ??? ???


 うん、全然分からなかった。


 ……まあいいか、とりあえず攻撃だ。

 剣と盾をしっかりと握り、吶喊を行う。


「うぉぉぉぉぉぉぉ(ブウォン)ぉぉぉあああああ!!!」


 いやいやいやいや、無理無理無理無理ッ!

 駄目だ駄目だ、怖すぎて近づけない!!


 というかフィールド上の魔物に勝てないのに、どうしたらエリアボスに勝てるのさ!


 ……よし、物理が駄目なら魔法だ。

 魔法スキルを確認し、使用可能な魔法を見つけだして唱える。


「……■■■■──“光球ライトボール”!」


 すでに見てはいるものの、やはり魔法というのは興奮するな!


 長い詠唱を終えて放ったのは光の玉。

 弱々しい光を帯び、ふらふらと飛んでワイバーンの方へ向かっていき──接触する。


『(ポンッ)…………?』


 ぜ、全然効いてねー。

 もう、どうやったら勝てるのさー。


「これ、どうやったら勝てドゥブゥウウ!」


 なんてことはない、ワイバーンが爪を俺に向けてきただけだ。

 口に出してしまっていた思考ごと、俺の意識はスッキリとリセットされる(強制)。


 ワイバーンにとってそれは、児戯にも等しい行動。

 しかし、無力でか弱い俺にとってそれは、死神に鎌を差し出されたことと同意である。


「がっ、かっ、ぐぶぅ……は、ふぅ」


 何度もバウンドを繰り返し、ボス戦用の結界まで吹き飛ばされる。

 どれだけ苦しく体が傷つこうと、俺の痛みは決して止まない。


 一体目の魔物を倒すまで、俺のHPが減らないことは運営のお墨付き。

 最初に倒すならボスキャラにして、強敵討伐ボーナスでも手に入れようとした……その考えが浅はかだったのかもな。


 だがこのとき、一つの考えが湧いてきた。

 頭をぶつけたから冴え渡ったのかもな。


 ──そうだ、ワイバーンこいつを使ってスキルレベリングをしよう。


 いやだって、こいつ全然ダメージ喰らわないし……サンドバックにした方が早くね?


  ◆   □   ◆   □   ◆


 そこからの俺の行動は早かった。


 AFOでは、種族と職業の合計レベルが低ければ低いほどそれらのレベルやスキルのレベルが上がるらしい。

 また、スキルを行使する対象が強ければ強いほどレベルが上がる。


 要するに──自分が弱くて相手が強い、この状況こそがまさにレベル上げのチャンス!




 まず、今メインに入れてあるスキルをすべて、進化待機状態まで引き上げる。

 時々ワイバーンから攻撃を受けて苦痛を感じるが、少し休憩してから再度挑戦した。


 実際にレベルが上がっているのが分かるからこそ、何度でも挑むことができたのだ。



 次に、サブスキルの中で今上げられるスキルをメインと入れ替える。

 AFOでは戦闘中もメニューを使うことが可能なので、レベリングを行い、できるだけスキル全部を進化待機──つまりカンスト状態まで上げた。


 ただ、一定以上の距離を開けておけなければその設定が行えないのが痛かったよ。

 そのため、わざわざ弾き飛ばされて痛みに耐え、そこで画面を操作する羽目に……。



 ワイバーンの反撃は何度も行われる。

 噛みつきや尻尾攻撃テールスイング息吹ブレスなどでこちらを攻撃してきた。


 だが、すべて効かない──効くはずない。

 ……だってチュートリアル中むてきモードだから。



 ワイバーンの攻撃を無視しつつ、次に行ったのはスキルの進化だ。

 スキルポイントも大量に貯まっている。


 そんなわけで、全部進化させてみた──


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武術系

(剣術Lv30:5)→(大剣術Lv1:10)・(短剣術Lv1:10)

(盾術Lv30:5)→(大盾術Lv1:10)・(小盾術Lv1:10)・(両盾術Lv1:10)

(格闘術:5)→(気闘術Lv1:10)・(魔闘術Lv1:10)

魔法系

(風魔法Lv30)→(暴風魔法Lv1:10)

(回復魔法Lv30)→(恢復魔法Lv1:10)

(光魔法Lv30:5)→(煌魔法Lv1:10)・(時魔法Lv1:10)

(闇魔法Lv30:10→5)→(冥魔法Lv1:15)・(空間魔法Lv1:10)

身体

(飛行Lv30)→(舞空Lv1:10)

(○○○向上補正)×5→(能力値向上補正Lv1:25)統合

(異常耐性Lv99)→(異常激減Lv1:30)

(ダッシュLv30)(ジャンプLv30)→(回避Lv1:10)

(瞑想Lv30)→(冥想Lv1:10)

技能

(鑑定Lv30)→(中級鑑定Lv1:10)

(隠蔽Lv30)→(中級隠蔽Lv1:10)


SP:30

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 同じスキルで二つ以上あるのは、再取得の機能を使ってまた取り直したからだ。

 一度取ったスキルは、SPを消費することで再度習得できる。


 スキルには適性があり、無いスキルはSPの消費が多い。

 俺の場合は闇属性のスキル……まあ、天使だからな。


 だが再取得を行ったスキルの場合、適正に関係なく定価(?)で習得可能。

 そこら辺のサービスは、しっかりと行き届いているようだな。 



 レベルを上げてはスキルを進化、再取得してまたレベリング……。

 こうしたサイクルを繰り返していき、満足がいったので一旦中止というのが現状だ。


 いやー、上げるのにまた時間がかかった。

 その間はずっとワイバーンをサンドバック代わりにしてたせいなのか……なんだかワイバーンが怯える目で見ている気がする……気のせい、だよね?


 あと、レベルだけが上がったスキルもあるがそれは……また別の時に。




 でも、これだけレベルを上げたのに全然ダメージが無いワイバーンって、ホント強いよな……いや、俺が弱いのか。

 だって、まだ種族・職業ともに1だし。


 ほんと、どうやって倒そうか。


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