01-08 チュートリアル その02
「嗚呼、世界はこんなに広かったのか」
眼下に広がる景色は、絶景と言うだけでは足りないほどに綺麗だった。
一言で纏めれば雲の絨毯である雲海。
だがそれ以上のものを見たかのように、俺は心の底から感動していた。
「もう疲れなんて吹っ飛んだ。俺は、これから真面目に働こう」
あまりに凄惨な記憶だ。
密林や草木で見つける魔物は全部『?』しか出てこないぐらい強い魔物ばかり。
お蔭様で、スキルレベルめっちゃ上がっておまけに新しい称号も得た。
「だがそれ以上に、キツイことがあった……うっ、頭が……」
それもいろいろとあったが、一つ一つ振り返るのも正直辛い。
まあ、一部始終を称号と共に思いだしてみようか。
◆ □ ◆ □ ◆
「“鑑定”……さっぱり分からない」
??? ???
??? ???
??? ???
魔物を調べた際の鑑定はこんな感じ。
植物の場合は称号と似た感じで、説明文が表記される。
──だが、それも全部『?』だらけだ。
きっと真面目に東に行った奴は、鑑定の王道である情報が視れているはずだ……くそっ羨ましい。
≪称号:『羨む者』を入手しました≫
「ガフッ! ……し、死ぬ。ダメージは受けないって言ったじゃないか!」
魔物が攻撃を行ってきたので、盾を使って防ごうとしたのだが……盾ごと一瞬で吹っ飛ばされ、木に激しく体をぶつける。
どうやらHPが減少しないだけで、痛覚はそのままのようだ。
感覚軽減のシステムもあるが、俺はそれをOFFにしているので激痛がそのまま体に響いていく。
……ほら、痛覚じゃなくて感覚だからさ。
もしかしたら、第六感的なものが冴え渡ると思うと止められなくて。
≪称号:『怠け者』を入手しました≫
≪称号:『完璧防御』を入手しました≫
≪称号:『奇跡の生還者』を入手しました≫
「オウェエエエ……。あ、アハハハ! う、ぐがっ……」
情緒不安定のように見えるだろうが、これにもちゃんとしたわけがある。
魔物に吹き飛ばされて倒れていた俺の近くに、綺麗な鱗粉を撒く蝶が現れたんだ。
幻想的な光景に酔っていたら、突然体が言うことを効かなくなって現在に至る。
吐き気に苛まれたり幻覚を見たり、体が硬直したり眠くなったり……まさに状態異常の嵐であった。
≪称号:『状態異常の克服者』を入手しました≫
「あ、ヤバッ。し、死ぬぅう。カヒュ―。かゆっ、うま……」
その後どうにか状態異常を克服した後、手に入れたスキルのレベリングを行うため、わざと状態異常になり続けた。
インベントリに仕舞ったアイテムの内、危険だと分かる物を食べると──鑑定結果が一部開示された。
なのでそれからは、道端に生えたキノコや雑草などを食べた結果……こうして今に至っている。
ちなみに状態異常は順に──石化、猛毒、窒息、催眠だ。
≪称号:『雑食』を入手しました≫
≪称号:『最速スキル限界到達』を入手しました≫
≪称号:『状態異常の支配者』を入手しました≫
「た、助けてぇええ!」
猛ダッシュで逃走中、背後には森の熊さんが爪を立てて待っている。
たまに爪を振るうと、遠くで何かが倒れる音がしているのがマジでヤバい。
いくら衝撃だけだといっても、やっぱり日本人は虚弱なんだよ!
≪称号:『逃亡者』を入手しました≫
≪称号:『跳躍者』を入手しました≫
◆ □ ◆ □ ◆
といったことがあったことを、よく分かってもらいたい。
その上で、雲海を見ていると聞くと……どれだけ俺が感動しているか、お分かりいただけるだろう。
激しく追い込まれ、疲労困憊の状態で見た絶景の雲の絨毯。
そりゃあもう、犯罪者でも涙が出る感動の光景ではないか。
「もう一度、確認しておくか」
称号リストを開き、俺が地獄を超えた証を並べていく──
---------------------------------------------------------
称号:『羨む者』
特典:スキル(羨望Lv1)
入手条件:鑑定をしたときに詳細がいっさい分からない存在を、一時間以内に十種類以上鑑定する
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『怠け者』
特典:スキル(瞑想Lv1)・【??】未開放
入手条件:戦闘中に一時間何もせずにいる
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『完璧防御』
特典:スキル(盾術)の派生に変化
入手条件:盾を持った状態で、格上の攻撃を三回連続で無効化する
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『奇跡の生存者』
特典:スキル(攻撃無効Lv-)
入手条件:自身のHPの二十倍の攻撃を受けて、二十回連続でソロで乗り切る
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『状態異常の克服者』
特典:スキル(異常耐性Lv1)
入手条件:状態異常に十回以上なり、五回以上何もせずに状態状態から脱する
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『雑食』
特典:スキル(悪食Lv1)
入手条件:状態異常を引き起こすアイテムを五分以内に十種類以上食べる
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『最速スキル限界到達』
特典:スキル枠+1 全スキルの派生に変化
入手条件:祈念者において、最速でSPを消費してスキルを進化する
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『状態異常の支配者』
特典:スキル【??】未開放
会得条件:状態異常を五回以上ソロで無効化する
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『逃亡者』
特典:スキル(ダッシュLv1)・(戦線離脱Lv1)
入手条件:魔物との戦闘を十回連続、逃走以外の行動を何もせずに回避する
---------------------------------------------------------
---------------------------------------------------------
称号:『跳躍者』
特典:スキル(ジャンプLv1)
会得条件:十回連続、全力の跳躍を行う
---------------------------------------------------------
称号の特典がスキルの場合、称号内容を調べて取得を意識するだけで手に入る。
即座の取得になっていないのは──不必要なスキルを取得し、それが勝手に経験値を徴収するスキルだった場合を考えてだろう。
実際前に取った(優越)、そして今回入手した(羨望)はいちおうそれに該当するからな。
逆にそれ以外の称号──『最速スキル限界到達』等の場合は、勝手に起動する。
メインスキル枠が一つ増え、新たな戦略を練れるようになった。
──それにしても、いろいろと取ったな。
【??】やら(攻撃無効)やら、わざわざ北のエリアまで来た甲斐があったよ。
途中で状態異常を克服できたのは、(異常耐性)が(異常激減)に成長できたのがデカいかもしれない。
……あれを習得してから、状態異常になってもすぐに回復したからな。
ちなみに、魔物に遭ったときは(ダッシュ)で逃げてるぞ。
お蔭様で逃げ足が早くなった気がする。
野生の勘に目覚めたのか、途中から気付かれる前に逃げられるようになった。
感覚をそのままにして意味があったのかと泣いたよ。
この辺りにいる魔物は、今の俺が戦ったとしても絶対に勝てない魔物ばかりだ。
強さがただ異常な奴もいれば、特殊な攻撃が原因のヤツもいる。
変わらない事実はただ一つ──俺が絶対に勝てないことだけだ。
あと……【??】ってスキルの詳細が全然出てこない──
---------------------------------------------------------
??スキル:【??】未開放
説明:???????????????????????????????????????????????????????……
---------------------------------------------------------
……もう、全然分からないよ。
そもそも【これ】の枠、何か普通のスキルとは異なるということなのだろう。
だからなのか(鑑定)も異常に成長した。
おかげで(鑑定)を発動させる際に消費するMP、それが空っぽになって身動きが取れなくなることもあった。
そこで再び、状態異常の嵐に巻き込まれることになったのは……懐かしいことだ。
……よし、休憩も終わったし。
そろそろチュートリアルを続けますか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます