01-07 チュートリアル その01



 ……まあ、とりあえず街の外に出るか。


「ふっふっふ。だがしかし、俺がただ東に行くとでも思ったか!」


 完成させたマップを使い、目的の場所へ移動する。


 向かったのは適正レベル10以下の『始まりの草原』に続く東門……ではなく、適正レベル30以上の『シンフォ高山』へ続く北門である。


 この町から向かえるエリアの中で、もっとも難易度の高いエリアだと思われる場所だ。


 せっかく『分からず屋』を取ったんだし、人とは違う行動をしまくろう! という凡人的頭脳が回転した結果である。




 北門に辿り着くと、そこで守衛が扉を守るように立っていた。

 ここを突破することで、誰も行ったことのないエリアに向かえるのだ。


「すみません! ここ通って良いですか?」


「……ん? ああ、良いぞ。だけど命の保証はできない──本当に行くのか? お前さんたち祈念者プレイヤーは、たしか東に行くようにって言われたらしいじゃないか」


 いきなりの質問にも、ここまであっさりと答えてくれる守衛さん。


(優しいな。本心から言ってくれているのがよく分かる)


 俺だったら──きっと適当に行かせて死に戻る姿を想像して、『プッザマ(笑)』とか呟くのに。


 あと今、プレイヤーって言われたとき──漢字で『祈念者』って言われた気がしたな。

 習得しておいた(言語理解)の恩恵か?

 祈る者……俺たちは何に祈るんだ?




 おっと、そういうのは後で考えようか。


「はい、大丈夫です。それなりに、行くための覚悟は決めています」


「なるほどね……ここを始まりの地とするだけの何かがあるのか」


 はい、薄っぺらい優越感でございまする。

 ただ、初期装備のまま突っ込もうと企む愚か者に気づかれても困る、どうにかして誤魔化しておかないとな。


「俺の名前はメルスです。よければ、あなたの名前を聞いてもいいですか? 親切にしてくれた方の名前はできるだけ覚えたいので」


「……あっ? 俺の名前? いいぞ、俺の名前は『ガル』だ。まあ、こんな場所にいるんだ。これからもメルスがここを通るときは、何度も顔を合わせるだろ。よろしくな」


 ガルさんって言うのかー、覚えておこう。

 ……俺の人物に関する記憶力って、あんまり無いから覚えられるか微妙だが。


 いちおうでも天使だし、あとで恩を返すべき人物の名は大切だ(翼は畳んで隠せた)。


「ありがとうございます、ガルさん。……それと少し、頼みたいことがあるんですけど」


「気をつけて……ん? まあ、俺にできることなら聞いてやるが」


 俺の事情を説明して、了承したガルさんが案内する場所へ向かうことになった。



  ◆   □   ◆   □   ◆



 俺が向かう先は、名称通り高山だ。


 つまりは町の外、殺される可能性のある場所へ向かうのである。

 ならばファンタジーの王道、みんなに愛され憎まれるアイツら──魔物が現れるはず。


 それなのに……今の俺は、初期装備を身に纏っているだけ。


 おまけにスキルも何も設定しておらずサブに置いてあってもレベルがアップする(優越)ぐらいしか意味をなさない(すでに先ほどの行動でレベルが上がっていた)。


「と、いうわけでメインスキルを設定するでござる」


 ガルさんに頼んだのは誰も入ってこない静かな場所。

 尋問用の部屋っぽい場所に案内され、そこでスキルを設定している。


 メインはたしか十個だけ、ならその中で戦えるような構成を考え……こんな感じか──


---------------------------------------------------------

武術

(剣術Lv3)(盾術Lv1)

魔法

(光魔法Lv5)(闇魔法Lv1)

身体

(体幹Lv1)

技能

(鑑定Lv2)(隠蔽Lv1)

特殊

(旅人の心得Lv1)(善なる心Lv1)(正なる心Lv1)

---------------------------------------------------------


 とりあえず、全種類入れておいた。

 これもまたなんとなくだけどな。


 ちなみに、AFOでSPはスキルレベルが5の倍数になると1P入る。

 だがレベルが上がるのは、(優越)のようなスキルを除けば基本メインスキルに入れたスキルだけ……いわゆる、装備しなければ意味がないぞ! なのだった。


 いちおう例外として職業・種族専用のスキルはサブに入れても問題ないらしいが、最低一つはメインの中に入れておかないと入れたものより成長率が悪くなるらしい。


 それでも枠を使わずにレベルが上がるというのは便利な仕様である……生産用の職業は戦闘中に対応する生産行動をしないと成長しないらしいけど。

 ──あれはあくまで生産に補正がスキル、戦闘経験で上がるはずがないのだ。


 いちおうだが、選んだ理由を。


 武器を使うので武術を二つ。

 魔法の中でもカッコイイ魔法を二つ。

 逃げるために体を使うだろうから(体幹)。

 相手の情報を調べるために(鑑定)、隠れるために(隠蔽)。

 残った三つの内、二つは職業・種族専用スキルだから。

 残った一つは完全に俺の趣味で選んだ。




「設定完了っと、よし、じゃあ行くか!」


 そう思い街の外に足を一歩出すと──


 ピコーン

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CLEAR!!

初期クエスト01


報酬:SP+5


NEXT

初期クエスト02 魔物を倒そう


報酬:???


説明:最初の一匹では、ダメージは受けないから安心してね

だけど、初期クエストが全て終わるまで町には戻れないよ♪

スキルは設定しないと使えないぞ

===============================


「うわー、それでか~」


 だから運営は、どんどんチュートリアルを進めさせたかったのか。


 そりゃあ俺に『分からず屋』なんて与えたくなるわけだ。


 ……えっ、クエストは〔いいえ〕を選んだはずだろ、だって?

 再受注できるって選んだあとに書いてあったんだよ(間違えた奴用の保険だろうな)。




 まあ、そんな些細なことは置いておくとして――このエリアで一番強い奴を倒しに逝きますか(レベル的に)。


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