01-10 チュートリアル その04



 前回までのあらすじ

 シンフォ高山にチュートリアルをしに来た俺は、エリアボスである亜竜ワイバーンとの、激しい戦いを繰り広げているのであった」


 ……って感じで纏めればいいのだろうか?

 実際、どっちの攻撃も効いていないけど。


 あいつはこの戦闘がチュートリアルモードだから(ダメージが0)、俺は火力不足だから(レベルが1)。


「……何か役に立つスキルはないかなー」


 スキルを習得するにも5Pでは足りない気がしたので、再びスキルレベリングを行ってポイントを増やしていく。


 進化したスキルはレベルを上げづらくなってはいるが、それでもまだ相手がボス(強化体)なためグングン上がる。


 そんなことを呟きつつ、スキルチェックしていると──


『GYAAAAAAAAAAA!!』


 またワイバーンが痺れを切らし、俺の体に噛みついてきた。

 何度やったって、チュートリアル中だから無駄なのに……痛いけど。


 ついでに立てられた牙に盾をちょこんと当てて、盾術系統のスキルのレベリングを行っていく。


 新しく武術系のスキルを習得すると、そのスキルに対応した初期装備が与えられる。


 だがそれ──耐久力は∞だが、1ダメージしか与えられない武器や防御力0の防具だ。

 戦闘に使うなら、ちゃんとした物を用意する必要がある。


 なので、今構えている両手盾も使っている意味などなく、上顎と下顎に挟まれる形で激痛が走っていく。


 それでも冷静に両手盾を構え、ちょうどいい防ぎ方を考察している。

 ……だんだんと痛覚が鈍り、痛みが消えているのが問題なのかな?


「というか本当に、代わりに喰らいついてやろうか? ……って、それでいいじゃん」


 目には目を、歯には歯を。

 いわゆるハンムラビ法典に則り、俺も亜竜に噛みついていこう……そんな思考が刹那の内に閃く。


「まあ、それなら爪で引っ掻いたり尻尾を使わないと駄目なんだけど……そこは、置いておくとしよう」


 そう決めるとまず、それが可能そうなスキルを捜索する。


 ──すると、もうすでに持っていることに気づく。


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身体スキル:(悪食Lv1)


説明:未加工のものや味覚に合わないものを食べる際、消化に補正が入る

レベルが上昇することで、補正が向上する

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 そう、称号『雑食』で取ったスキル(悪食)先生であった。


 未加工なもの──つまり生肉。

 合わないもの──つまり生肉。


 このスキルはこのときのため、与えられたと言っても過言ではない!


「……うん、キノコのためだな」


 ま、まあ、これがあればワイバーンを食べても問題ない……だが、さすがに生は嫌だ。


「──と、いうことなので(火魔法Lv1:5)を習得するでござる……よし、取れた」


 使い方はこれまでの魔法と同様なので、簡単に使える。


「まあ練習を。……■■──“火球ファイアーボール”」


 すると、俺の手から放たれた小さな火の玉がふよふよと亜竜に向かい……ポンッと音を立てて消える。

 まあ、それは分かっていたからな。


 それを何度も何度も行い、俺のイメージ通りに熱を操作できるようになるまでレベリングを行っていく。

 最初は一定温度のまま変化しなかったのだが、少しずつ温度を大きく変化できるようになる。


 ──そしてレベルが20程になると、どうにか温度の掌握が可能になった。


 あっ、いっさい進化させていないスキル、そのほとんどが30でMAXになるらしい。

 なので、一つのスキルで入手できるSPは最低6P。

 最低二つはスキルを育てないと、新しいスキルは入手できないのである。



 閑話休題たいへんなんだよ



「次はどこを食べるかなだな。不味い部分を食うのもあれだし、どうせ食うなら美味しい部位を食べたい」


 とっくに牙からは脱出し、現在は尻尾に絡められて圧迫されている。

 内臓が潰れそうな感覚があるが、実際には保護膜でも張られているかのように外傷は見つからない。


 ──なので気にせず、食べる部位を選ぶ。


 表面は鱗で覆われてるし、まずはそれを突破して……中だな。

 俺に鱗をボリボリと食べる趣味は無いし、歯がそんなことをするのには耐えられない。


 まあ、そうと決まれば──


「……■■■──“光球ライトボール”」


『GUGYAA!』


 ずっと似たような悲鳴を上げている亜竜ワイバーン、その目玉に閃光を放ち、尻尾の絞め具合を変化させる。

 緩まるか絞まるかの二択であるが、幸いその賭けは上手くいって緩まっていく。


「……■■■■──“空間移動ムーブ”」


 そして緩まった尻尾から脱出し、亜竜の眼前に空間魔法で移動する。

 視界を奪われて戸惑う様子を見せる亜竜。


 俺はその隙を突き──


「とりゃぁああああああああ!!」


『GURU?』


「──お口の中へ、ドオォォォォン!」


『GUGYAAAAAAAAA!!』


 顎が閉まる前に中へ突入!

 多少臭うが気にしてはいられない。


 目的地は美味しい部位、さぁファンタジー食を頂こうではないか!


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