第33話 茜の過去 その2 (大樹寺 弦)
レッドドラゴンチームに配属されてからひと月が
レッドドラゴンチームのメンバーは作戦会議室に居た。
「魔物、魔人がこのところ現れないから、助かるわ」
そう呟くのは、レッドドラゴンチームのチーフ、メリル=ファイン。その横でパートナーの女神候補生、ルイールがその小さな体で頷く。
イエロードラゴンチームが発足されてまだ日は浅い。チームとしてはまだしっかりと機能してなく、魔物との戦い時は少し苦戦したとメリルは聞いていた。
「ねえ、メリル」
「うん?なに?」
「どうして今になってチームを増やすのかしら?今の魔物や魔人の出現率なら私達レッドドラゴンチームだけで対応できるのに」
不思議がるルイール。その小学生並み?の小さな身体をピョコピョコと動かしては、メリルに聞いてくる。
「今のままならね。けど女神アース様は近いうちに魔物や魔人が増えると言っているから。まあ、備えあればなんとかってね」
そうルイールに笑みを向けるメリル。
その横でエルゼ=マフィンが目の前に置かれた魔物、魔人の出現率の資料を読みながらメリルに、
「確かに、この資料からだと少しですが、魔物、魔人が出現してますね」
綺麗な肩まで伸びた金髪を少し左右に振るとメリルの方を向いて言った。
そのエルゼの横には、これまた美しいストレートの腰まで伸びた金髪の、いかにも優しそうな顔をした、エルゼのパートナーの女神候補生のミィアが頷く。
このエルゼ=マフィンは、まだ十代半ばだと言うのに、レッドドラゴンチームの副チーフ的な事をしている。
そして魔法力もかなり強力。
噂によれば、女神候補生と【リンク】もしないで、一人で魔人を倒したとか。
そして、そのエルゼの資料を横から顔を出して覗き込んでいるのがケイト=クシャクとその女神候補生のエイミ。
なんとこのケイト=クシャクはレッドドラゴンとイエロードラゴンの機体とここ、救助隊の施設を作り上げた中心人物。
しかも歳はまだ11歳だとか。
確かに表情は幼く見える。
そして、少し離れた席に座るのは先程会ったギルシェ=バンカーとその女神候補生のミンバ。
「あのう。あの二人はどうしてみなさんの近くの席につかないんですか?」
「あっ、あなたがアマネイルさんね」
クスッと少し笑みを浮かべながら言ってきたのは、エルゼ=マフィン。
「あの二人はね〜、エルゼの事が怖いのよ」
クスクスと笑いながら言う、ケイト=クシャク
「えっ?なぜなんですか?」
「それはエルゼの魔法力が半端ないのよ。私達と比べてね」
私は驚いた。こんなに若く優しそうなエルゼさんが、あの、ギルシェさんに恐れられているとは。
そう思っていた時、
「ビー!ビー!ビー!レッドドラゴンチームは直ちに出撃準備に入れ!繰り返す!レッドドラゴンチームは直ちに出撃準備に入れ!」
館内放送の音が響き渡り、緊張が走る。
私の周りに居た人達の顔が一気に真剣な表情になった。
そしてチーフのメリルが
「ケイト!この場に居る全員をレッドドラゴンのコクピットに転送!」
「了解!」
ケイト=クシャクが左腕につけてある腕時計の用な機械のボタンを押すと、その場に居たチームの全員は一瞬で姿が消え、次の瞬間、レッドドラゴンのコクピットに転送された。
転送された私達は直ぐに持ち場に着いた。
「アマネイル!お前は私の隣へ!エルゼ!司令室からはなんて言って来ている!」
「はい!‥‥‥魔人が現れたと!」
「魔人‥‥‥で!場所は!」
「場所は‥‥‥ここです!アンダーワールド!この世界です!」
「!‥‥‥レッドドラゴンは出撃準備でき次第、緊急発進!」
「「「「了解!」」」」
アンダーワールドに魔人が出現した事で、更にコクピット内に緊張が走る。
そして、その頃魔人が出現した場所はパニックになっていた。
◇◇◇
ここは救助隊本部から100キロ程離れた街、ナンキヨウ。
街中にいきなり現れた魔人に街人達はパニックになっていた。
その魔人は体長は14、5メートルの巨大なゴリラに黒い鎧のような物が全身に張り巡らされ、頭にはカブトムシの用なツノが生えている。
魔人はそのツノを大きく振る。
その風は凄まじく、風だけで近くの建物は吹き飛んだ。
そして口からは青白い炎をまるで火炎放射器のように吐いた。
「まったく、どこなんだよ!ここは!。空間の歪みにこいつと一緒に引きずり込まれたら、こんな所に出たが‥‥‥兎に角こいつをなんとかしないと」
魔人の前に立つ一人の少年。
歳は15、6だろうか?それぐらいに見える。
黒い髪のショートヘアに茶色い瞳、身長は170ぐらいか。
どこかの冬服用の黒の学生服を着ている。
その少年はまるで刀か剣を持つ姿勢を取ると、その手先から白く光るつるぎが伸びた。
それはまるで刀か剣に見える。
その長さは1メートルぐらいか。
そしてその白く光る刀を魔人目掛けて振りかざした。
「ブーン!」
「ぎゃあああ!」
振りかざした光る刀は何メートルも伸びると、剣先が魔人に届き、魔人を切ると痛みに耐えきれなく叫ぶ魔人に、また光る刀を振りかざす。
剣先がまたも魔人を切る。
痛みに 叫ぶ魔人は、少年目掛けて口から青白い炎を吐く。その炎をいとも簡単にヒラリと交わす。
この魔人と戦っている少年こそ、若かりし日の大樹寺 弦。その人だった。
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