第32話 茜(アマネイル)の過去。その1

ジンの母親、茜が言った。

ジンの父、大樹寺だいじゅうじ げんは女神候補生だった茜のパートナーだったと。



「母さんが女神候補生‥‥‥オヤジが女神候補生のパートナー‥‥‥訳わかんねえよ!」



ジンは左手を自分の顔に当てると、困惑し、悩むと左右に首を小さく振る。

そんなジンを見た舞は



「ママ‥‥‥本当なの?」



神妙な面持ちで母、茜に聞く舞。



「‥‥‥ええ、本当よ‥」



舞の問いに茜は答える。しかしその言葉には自分の隠していた過去を話さなければならない辛い気持ちが感じられた。

そして語る。茜の過去を‥‥‥

女神候補生の時の名、アマネイルの時の事を。ジンと舞の父、大樹寺 弦との出会いの事を‥‥‥。



「あれは私がまだ、女神候補生になりたての頃‥‥‥パートナーを探していた頃‥‥‥この世界で25年前の話‥‥‥」



あの頃はまだ魔物や魔人は今ほど出現してはいなかった。

そして、私はアンダーワールドの女神アースにより選ばれ、救助隊に入った。

その頃はまだ正式に動かせるチームはレッドドラゴンチームしかなく、 私が正式に救助隊に入って間もなく、イエロードラゴンチームが出来た。

その頃のレッドドラゴンチームは女神候補生をいれて全部で12人いた。

そしてイエロードラゴンチーム発足と同時に

6人が抜けた。

私はその時の補充要員として、レッドドラゴンチームに配属になった。



「レッドドラゴンチームに配属になりました女神候補生のアマネイルです!」


「私がこのレッドドラゴンチームのチーフ、メリル=ファインよ。よろしく」



モニターとテーブルと椅子しかない5メートル四方の白い部屋の中でアマネイルとレッドドラゴンチームのチーフは挨拶をした。

そう、ここはレッドドラゴンチームのチーフの専用の部屋。

そこの 部屋の椅子に腰掛けているのは、長い髪のストレートの金髪美女。身長は170ぐらいか。スタイルも良く、顔はチーフに似合わずおっとりとした表情をしている。

そのメリルの横にはパートナーの女神候補生のルイールが居た。

ルイールは身長は150と低いが、ぱっと見た目が小学生かと思える程の容姿で、緑の綺麗な髪をツインテールにし、 服装は緑のフリルのついたドレスを着ている。



「あなたがアマネイルね。よろしくね」


「あっ!はい!こ、こちらこそ!」


「そんなに緊張しなくてもいいわよ」



私は、はじめてで緊張した。けど、この緊張はこの二人から感じる魔法力がかなり強く感じての緊張だった。



「あなたのパートナーは暫くは決まりそうにないから、私達と行動してもらえるかしら」



メリルチーフが申し訳ないような顔をすると私は「はい」と返事をした。

確かにパートナーが直ぐに決まらないのは残念だが、どうせパートナーは女性になるはず。なぜなら魔法力は女性の方が断然上なのだから。

だから私は暫くは一人でもいいかなと思っていた。

そんな時、ドアをノックする音が聞こえた。



「コンコン」


「ギルシェです。報告書を持って来ました」


「入っていいわよ」



ドアが自動で開くと、私は唖然とした。そこには女性?て思える程の人がいた。

身長は190は超えているか。体格もかなりの筋肉質。しかし胸は出ている。この人がもし男性ならさぞもてたのではと思える程の面構え。

そんな人が私の前をノシノシと歩いて行きメリルチーフの前に立つとお辞儀をして、報告書を渡した。



「ご苦労様。あっそうそう、この子が今度レッドドラゴンチームに配属になった、女神候補生のアマネイルよ。仲良くしてあげてね」


「お前が新しく入った女神候補生か」


「あっ、はい!ア、アマネイルです。よ、よろしくお願いします」



私はこのギルシェと言う人を見て、少しまた緊張した。けどチーフとの時とは違い、今度は恐怖みたいなのを感じた。

だって見た感じが凄いんですもの。



ーーーこれが私、アマネイルが初めてギルシェに会った時の事‥‥‥そしてこの後暫くして私はあの人に会いパートナーになる。大樹寺 弦にーーー














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