第26話 お願い‥‥

ギルシェと精神を入れ替えたミンバが、バックゲートを開く。それに吸い込まれる様に消えていく、飛行タイプの魔物。

もう一体の飛行タイプの魔物を追うケルベロスからも、バックゲートが見えた。



『あいつら、やりおったか。私も負けてなぞいられるな!』



そう自分に喝を入れる様に言うと、ケルベロスの目が鋭くなる。

ーーーあやつ‥‥‥舞が二度も私の体を直してくれた。そして、今の私の魔法力は、天界に居た時よりも漲っているーーー


ケルベロスの飛行速度が上がる。魔物も必死に逃げる。上空の雲を互いが突き抜ける。

そして‥‥‥



「ズバァァァ!!!」



最初に雲から突き抜けたのはケルベロスだ!

ケルベロスは向きをすぐに魔物に向けると、口を大きく開け、魔法弾を連射する。



「ダアン!ダアン!」



先程の魔法弾より威力が増している。連射した魔法弾は二発とも魔物の両翼に当たる。



「ギャァ、ギャアアア!」



悲鳴の様な雄叫びをあげると、翼の扶翼を無くした魔物は、地上へと落ちていった。

それを見たケルベロスは、思念波でメイリに言う。



『バックゲートを開け!』 と。



ケルベロスからの思念波に驚くメイリ。だがメイリは


「ケルベロスさん‥‥‥今の私の魔法力ではあの魔物をバックゲートで送り返すことは無理です‥」


自分の力の無さか、悔しそうに言うメイリにケルベロスは答える。



『お前の前にいる男に手伝ってもらえ!』


「前に居る男に‥‥ジンに‥‥」



メイリはジンに近寄ると、



「ジン!お願い!貴方の力を‥‥魔法力を‥私に貸して!お願い!」


メイリの言葉にゆっくりとメイリの方に向くジン。だが、まだジンの体はミュウの精神の状態。


ーーー「ジン、メイリが貴方に力を貸して欲しいと言っているわよ」


「‥‥‥‥」


「ジン!聞いてる!」


「‥‥俺は‥魔物‥魔人を殺したいのか‥‥」


「なに言ってるのジン!」


「教えてくれミュウ‥‥俺はどうすれば‥‥」


「まだ悩んでいるなら、あの子に聞きなさい!」


「あっ‥‥ミュウ‥」ーーー



ミュウは少しふてくされた様な感じでジンに言うと、精神を入れ替え、ジンの体をジンに返した。



「あっ‥‥‥」


精神が元に戻ったジンの前には、神妙な想いのメイリが居た。


「ジン、お願い!力を‥貴方の力を貸して!」


そい言うメイリは、ジンの手を取ると、ギュッと握り、「貴方の力を‥」を繰り返して言う。

そんな真剣な表情で言うメイリにジンは、



「メイリ‥さん。貴女は魔物や魔人が憎くないんですか?」


「えっ?」


「何故貴女は魔物、魔人を送り返すのに力を注ぐのですか?倒そうと思わないんですか?」


するとメイリはジンの言葉に直ぐに答えた。



「魔物、魔人は倒せないのよ」


「知ってます。だったら葬り去る事は」


ジンの言葉にメイリは首を横に振ると



「ジン、魔物、魔人は‥‥私達、いえ、生きとし生けるものの犠牲者なのよ」


「魔物が犠牲者!?」

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