第14話 黒い塊

ブルードラゴン機がアンダーワールドから飛び立った。その頃人間界、つまり我々の世界ではジンとミュウが契約の件でもめていた時‥‥‥


「あの空に浮かび上がった物はなんなんだよ!」


それに驚く神はミュウと契約の事での事など一瞬忘れるほど。そしてミュウも、いやミュウは目を細めて真剣な表情で空に浮かび上がった物を見ていた。


「‥‥‥あれは!まさか魔法陣!」


「魔法陣だって?」


ミュウが魔法陣と言うと神は「?」と顔をしてミュウに聞く。


「魔法陣てなんだよ!まさかアイツ見たいなのがまた出てくるのかよ!」


神は目の前に居る巨大なかみの番犬ケルベロスに指をさして言うとミュウは空に現れた魔法陣を見て、


「黒い魔法陣‥‥‥て!まさかアイツがあらわれるの!」


「あいつ?あいつて何だよ!」


「魔物よ!」


「魔物?」


ミュウはそれだけ言うとまるで何かに怯える様に両腕を組み体を震えだした。その姿はまるで子犬が何かに怯え震える様に。


◇◇◇


その頃、舞と店の店長は大勢の人達とサーキット場が見渡せる丘の上に避難していた。


「ねえ‥‥‥店長さん、お兄ちゃんは無事よね‥」


心配そうにサーキット場の方を見る舞に店長は


「大丈夫だ!あいつがそんなに簡単にくたばらないのは舞ちゃんが一番分かってるんじゃないのかい」


「う、うん‥‥けど‥‥お兄ちゃんはすぐ無茶をするから‥‥‥」


そう言うとしばらく舞はサーキット場の方を心配そうに見ていた。あのケルベロスが居る所は丁度山陰になり見えない。神の安否が気にかかる。そんな状態の舞の不安はやはり増すばかり。だから舞は、


「‥‥‥店長さん、私やっぱり心配だからお兄ちゃんを見てきます!」


「あっ!舞ちゃん、ちょっと待って‥‥‥」


店長が舞を引き止めようとした時、空にまたあの円状の模様が現れた。丘の上に避難した人達は皆、ざわめき始める。そして店長もそのざわめきに舞を追う足を止めて空を見上げた。


「またか!ゴクン‥‥‥またあんなバケモノがあらわれるのかよ!」


舞はその事に気付いておらず、神の所に行きたいが為急いで丘を下って行った。


「お兄ちゃん!お兄ちゃん!お兄ちゃん!」



◇◇◇


魔物‥神は昔おとぎ話で聞かされていた言葉。それは恐ろしい生き物。だが中には心優しい魔物も居たおとぎ話を聞かされた事もあった‥‥‥だが今、神の目の前に現れようとしている魔物は‥‥‥


「ミュウ!魔物とは何だ!いったいどうして‥‥‥」


「魔物は人‥‥‥いえ、世界を喰らう化け物」


「世界を喰らう?」


「そう、魔物は魔法を使えれない代わりに世界を喰らうのよ!」


「言っている意味が分からない‥‥‥なあっ!何だよあれは」


神がミュウの話が見えなく、気が立ち慌てだしていると、黒い魔法陣からゆっくり黒い塊が現れた。そして‥いきなり地面に向かって急降下して来た。


「ヒューーーーン‥‥ドオーーーン!!!」


神達から100メートル離れた場所に、黒い塊は思いっきり地面に衝突すると、衝突した勢いで周りに爆風のような砂嵐が巻き散らかる。その爆風でミュウが「キャァー!」叫びながら吹き飛ばされそうになるが、神がミュウの腕を掴み自分に引き寄せると、ミュウを抱き締めて自分の体でミュウを爆風からかばった。


「グッ!‥なんだあよ!」


「‥‥‥あなた‥どうして‥」


「そんなの知るかよ!体が勝手に動いただけだ!それより大丈夫か?」


「え、ええ‥‥」


ミュウは疑問に思った。どうして初めて会った見ず知らずの者を自分の身を呈して助けてくれたのかと。


「この人なら‥‥‥」


ミュウが思っていた時、黒い塊は何かに姿を変えようとしていた。

「ズズズズズッ‥‥」

そして、ついに黒い塊は姿を変えた。


「あれは‥‥ケルベロス!‥‥いやまるであれは‥」


その姿は、顔はオオカミ、体はサイ、尻尾は3本あり先端が蛇の頭になっている。その姿を見て神は、神の頭に浮かんだ三文字が言葉にもれた。あれは、あれは‥‥‥


「‥‥‥キメラ‥‥‥」


だと。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る