キャラクタークリエイト
まぶたを開く。
どうやらボクは木造小屋の部屋ような場所にいるようだった。
窓はあるものの、外の景色は見えない。
光あふれるどこかのようだ。
「アルケニアオンラインの世界ヘようこそ、私はナビゲーターのルーナと申します」
声を掛けられて気が付いた。
ボクの背後には少し小さめの体をした青い髪の少女がいた。
身長はおそらく150センチあるかどうかといった感じだ。
長く美しい青い髪、そして背中から生えた純白の二対の翼。
天使というやつだろうか?
「ご気分はいかがでしょうか? これよりあなたのアルケニアでの体を作ります。作る方法ですが、一からデザインなさいますか? それともあなたの体をベースにしますか?」
優し気な青い瞳でボクを見つめながら問いかけてくる天使の少女ルーナ。
ボクは迷いなく答える。
「ベースはボクの体でお願いします」
「良い判断だと思います。その体でデザインしましょう」
ボクの答えを聞くと、ルーナはうなづき手をかざす。
すると、ボクと同じ顔と体をした存在が目の前に現れた。
短時間で複製したのだろうか?
「では、細部を決めてまいりましょう。目の前にウィンドウが投影されていると思います。そちらを操作し、自分好みに調整してくださいませ」
素体から目を離して前を見ると、ルーナの言う通りのウィンドウが空中に投影されていた。
そのウィンドウに軽く触れると、なぜか硬い感触があった。
不思議に思いながら、投影されているボタンを押して、自分の体を調整していく。
「身長はボクくらいで、性別は不明だから不明を選ぶっと。髪色はボク準拠でいいか。う~ん、案外変えるところないかもしれない」
変化時のボクの髪の色は黒、通常時は青銀色で現代社会では見ることはない色だ。
身長は147センチ程度、髪の毛は最近少し伸びたものの一応ショートヘアだ。
瞳の色は変化時は黒で、通常時は紅色をしている。
ややたれ目なのはお母さんの影響だろう。
本来のボクを知らない人は多いので、そこまで変更する必要もないだろう。
うん、デフォルトなボクからちっとも変ってないな。
「デフォルト設定では一種類の人間種しか選べないのですが、妖種である貴方様は特別に人間種か妖種を選ぶことができます。もちろん、種族は様々なものがありますので、今人間種を選ばれても、後で妖種やそのほかの種に進化することが可能でございます。なので、悩まず直感で決めてしまいましょう」
ナビゲーターのルーナはかなり人間っぽいと思う。
喜怒哀楽ははっきりしているし、ややドジだ。
「それなら、妖狐族の天狐種に設定っと。わっ、狐耳と尻尾が生えた! いいねいいね~」
最初は人間の形だったものが、種族を設定することでボクが推奨する形へと変化してくれた。
やっぱり耳と尻尾は大事だよね。
「貴方様は妖狐族の方なのですね。とってもキュートなお耳と尻尾だと思います。さて、それでは職業を決めてしまいましょう。多種多様なものがあるのですが、スキャンデータを用いた最も適性ある職業を自動選択することもできます。どうなさいますか?」
「それじゃあ、とりあえず自動選択されたもの見せてもらってもいいかな?」
「かしこまりました。こちらが貴方様用に選ばれたものでございます」
そう言ってルーナがボクに見せてくれた情報には、『道士見習い』という職業名が表示されていた。
道士見習いってなんだろう?
「ねぇ、ルーナ? 道士見習いってどんな職業なの?」
「道士見習いは道士という職業の一つ前の段階となります。道士の次は陰陽師見習い、そして陰陽師へと続き、陰陽頭へと至ることができるようになっています。基本的に攻めることも守ることもできる職業で、術師系でありながら刀術による攻撃や鉄扇による攻撃も得意としています。神獣召喚や五行属性を使った属性攻撃術、強力な結界で味方を守る防御術を所持しており、使い勝手のいい符術なども所持しています。浄化というスキルが使えるのも特徴です。ただし、直接的な防御力は弱いため、打ち合いにおいては不利になります」
ルーナの説明を聞くに、かなり便利な職業にも聞こえる。
言ってみればプロフェッショナルというわけだ。
でも、こういうものには意外と欠点があったりするはずだ。
「欠点とかはないの?」
「欠点といいますと、その特殊性ゆえに術を取得できる場所がほぼないことでしょうか。
魔術師や神官などとは違い、どこでも学べるわけではありません」
つまり、新しい術を学びたいと思ったとき、遠くまで行っていたら一々戻らないといけないというわけだ。
これは面倒くさい。
「それと、装備類についても専用のものですので、自作するか宝箱に期待するか、売っている国まで出向く必要があります。ですので、能力の割に活躍はだいぶ後になると思われます」
なんということだろう。
面白そうな職業なのに、システム面で不遇だった。
「スキルはみんなNPCから覚えないとだめなの?」
「いいえ、初期に設定されている基本的なスキルの半分は転職やレベルアップの際に覚えることができます。
それ以外の残りの半分のスキルはNPCからしか覚えられません。
また、魔術開発や術研究といった研究要素もありますので、そういうものを利用して独自に作り出すことも可能です。
この世界の特徴として、無限の成長と無限の可能性というものがありますのでオンリーワンを作り出すことも可能です」
「それってサーバーとかパンクしないの?」
「はい、その辺りは機密情報になりますが問題ないと判断しています。
新しい術を開発すると、システム内の規則に従って効果が付与されます。
おおよそ予定通りのものが出来ると思いますが、例えば世界を壊すようなものは作ることができません。
その時点で無効化されるか、別の効果に置き換わりますのでご注意くださいませ」
ルーナの言葉が正しければ、この世界では自分のオリジナルを作ることができるようだ。
なら、ある意味オンリーワンの最強を目指すことも可能なのかもしれないとボクは思ってしまった。
「それでは最後にお名前を決めてしまいましょう。お名前をお願いいたします」
「それじゃあ、スピカで」
「かしこまりました、スピカ様。これで全部の登録は終了となります。今後のスピカ様についてですが、道士見習いから道士、そして陰陽師見習いへと転職していくことになります。また、スピカ様の種族は妖狐族ですが、スキャン結果から進化先が一つの系統しか選べないことが分かりました。人間種の方であれば、様々な種族への進化の可能性や変化の可能性が得られたのですが、妖種の方ですので、限定的になってしまいます。具体的に申し上げますと、妖狐族のスピカ様の進化先は天狐系統のみとなってしまいます。妖種の方は人間種の方と違って、幅広く選ぶことができない強い個性を持っていますので、どうしてもそのようになってしまいます」
ルーナは申し訳なさそうにしているけれど、ボクには何の問題もなかった。
というか、妖種は妖種なので、自分の進化先は自分の理想としている種の進化先になると思う。
なので、ボク個人の意見というか、大多数の意見でもそうなんだけど、そういう点で人間種と差別化が図られる分には問題ないと思う。
「やっぱり人間の方が進化の仕方は多岐に渡っているんだね」
「はい、基本的にはスキャン結果に基づいた最適な進化の方向性を提示させていただくのですが、妖種の方はどうしても限定的になってしまいます」
「でも、それで問題は出ないと思うよ? ボクたちはなんだかんだ言って自分の種に誇りを持ってるしね」
気にしてもらうのは嬉しいけれど、ボクたちはそれについて不満を述べたりしないだろう。
なぜなら、今まで妖種がゲーム内で選択できる種として登場することはなかったからだ。
なので、今までのゲームをやる妖種は、不満を抱きつつ人間種を選ぶしかなかったのだ。
「それではこれからチュートリアルを行いたいと思いますので、仮想フィールドへ参りましょう。そちらでお渡しするものもありますので、チュートリアル終了後を楽しみにしていてくださいね?」
にこっと微笑むルーナはそう言うと、天に手をかざした。
すると、一気に小屋の風景から緑あふれる森と平原の境目のようなフィールドが現れたのだ。
「わっ、すごい!!」
「ふふふ、すごいでしょう? この場所でしかできないんですけどね。さて、これより戦闘チュートリアルを始めます。焦らずゆっくりついてきてくださいね」
ルーナがそう言うと同時に目の前に一頭の狼が現れたのだった。
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