第8話 依頼を遂行しよう2
「右からワイルドボアが3頭来ます」
アニスさんの警戒スキルで、敵の位置が丸わかりだった。
こそこそと近寄ってくる敵も警戒スキルにかかると、相手の位置がすぐにわかるからだ。
「よし来た、【ウィンドブレード】」
2本の風の大きな刃がワイルドボアに向かって行く。
「プギィィィ」
「ピギィィ」
2頭のワイルドボアは風の刃の餌食となって首を斬り飛ばされて沈黙した。
「【雷符】」
ボクの放った稲妻は、残りの1頭に直撃すると、そのまま頭を貫いて焼き殺していく。
「ピギュンッ」
一瞬で言語機能を奪われたのか、短い悲鳴だけを残して倒れるワイルドボア。
「なんだかスピカ、少し強くなったか? レベルアップの効果かな?」
アーク兄の言う通りかもしれない。
まだステータスは見ていないけど、ちょっと威力が上がった気がする。
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名前:スピカ
年齢:12歳
種族:妖狐族
性別:
職業:道士見習い
所属パーティ:
所属クラン:
登録ギルド:メルヴェイユ冒険者ギルド
冒険者ランク:F
レベル:6
HP:25
MP:60
SP:50
筋力:7
耐久:8
俊敏:6
魔力:6
所持スキル:
■武器マスタリー
【短剣マスタリー:ランク4】【スタッフマスタリー:ランク3】
■防具マスタリー
【ローブマスタリー:ランク4】
■知識
【薬師の知識:ランク3】【彫金の知識:ランク3】【鍛治の知識:ランク4】【木工の知識:ランク3】【鑑定:ランク2】
■攻撃術
■符術
【炎符:ランク4】【雷符:ランク4】【氷符:ランク4】【水符:ランク3】【風符:ランク3】【土符:ランク3】
■術合成
【符術合成:ランク1】
■所持中の加護・権能
■加護
【女神の加護】
■権能
【半神の権能】
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※運の補正によりクリティカル確率が上昇。
※ランク4に達した符術は組み合わせての使用が可能になりました。
※符術合成スキルは自動取得されました。
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全体的に能力が上がっているけど、なぜ力は10を越えないのか……。
現在のところ、完全な術師型という感じがしてくる。
新しいスキルとしては、符術の合成というものが出来るみたいだ。
組み合わせに限界があるのかな?
「ほう、術合成か。思ったより良いスキルだね。威力が一気に上がると思うな」
「へぇ~? 変わったスキルですね。相性とかあるのかな?」
アーク兄とアニスさんは興味深そうに覗いてくる。
マナー違反というつもりはないけど、ちょっと恥ずかしい。
「力は……、スピカちゃんらしいって言えばらしいよね」
「まぁ、スピカだし」
「どういうことだよ!!」
まったくもって失礼な話だよ。
もう少し物理が強くてもいいと思うんだけどなぁ……。
「ステータスが低くても避けられるのは、ステータスはあくまでも目安だからっていうのがあるのかもしれない。あとは本人に避ける気があるかがVRでは重要だと思う」
避けることに関しては、なぜか得意なんだよね。
「ステータスやスキルという外部要因が加わって、本人の本来の力や体捌きよりも活動出来てるような気がするなぁ」
「あっ、そうですね。何かにアシストされてる感じがします」
「使い慣れないと転ぶからよくわかるよ!」
ちなみに、ボクはレベルが上がった次の日に、調子に乗ったら盛大に転びました。
いつもと感覚が変わったというのはきっと言い訳なんだよね……。
「まぁスピカが転んだことに関してはスピカだからで済むけど、気を付けないと大きな失敗するからな」
アーク兄がそうまとめたところで、再び狩りに戻ることになった。
「直近でいたのはあの5頭だけみたいです。あっという間にやられたので、離れてると思いますけど、注意してください」
ボク達は慎重に進みながら、周りを確認していく。
途中気配はあるものの、様子見をしているような雰囲気があり、近づくと離れて行った。
「やきもきするね、これ……」
一向に捕まらない敵に、業を煮やしそうになる。
「相手だって命あってこそなんですよ。とはいえ、近場に出てる以上は抑えておかないと一般の人が困りますから」
野生動物が悪いわけじゃないけど、諦めてください。
「ん、どうやらフレンドがこの森に入ったみたいだ。こっちの進んでる方向と別方向から進むらしい。これなら異変の見逃しもなくなるだろう」
アーク兄は再び誰かと会話していた。
どうやら先ほどのフレンドさんのようだ。
「上手くいけば、向こうが追い立てた対象がこっちにやってくる。森の奥に行く前に猪くらいは倒してしまおう」
そしてボク達は、アーク兄のフレンドと連携を取って囲いこむ作戦に出た。
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「スピカ、そっちに2頭行った! 対応できるか⁉」
「大丈夫、任せて!」
「ちょっと熱いけど、ごめんね! 【炎雷招来】」
こっちに追い立てられてきた2頭のワイルドボアを倒しすために新しい術を行使していく。
高熱を伴う稲妻を頭に受けて、2頭が立て続けに焼け死んでいく。
「その技、意外とえぐいな。貫くだけじゃなくてついでに内部から頭部を焼いていくとか……」
アーク兄が若干引いているようだけど、見なかったことにしよう。
「アークトゥルスさん、そっちに3頭行きました」
「了解、【サイクロン】!!」
アーク兄の唱えた風の中級魔術、【サイクロン】は一定範囲の敵を巻き込み風の刃で切り刻んでいく範囲魔術だ。
「いっちょあがりっと。だいぶ進んだな。向こうの追立もなかなかだ」
現在も続けてアーク兄のフレンドパーティーと一緒に追い立て戦術を実行している。
「注意してください!! 10頭がまとまってきます!」
「まじか、予想外だわ」
アニスさんからの報告を受けて、アーク兄が何やら話し込んでいる。
どうやらアクシデントがあったようだ。
「ちょっとトラブルみたいだ。何とか撃破して、向こうに合流するぞ」
「あっ、炎雷とサイクロンって混ざらないかな?」
「ん? 魔術と符術でか? 出来るのか?」
「やってみてもいいかもしれないよ?」
「新しい試みですね、試す価値はあると思います」
話はまとまったようなので、ちょっとお試ししてみることにした。
イメージはファイアーストーム、つまり火炎竜巻だ。
短時間なら生木でもある森の生きている木は燃えないだろうと予想している。
「来ました! ワイルドボア10頭です!!」
「いっきます。【炎雷招来】!!」
「【サイクロン】!!」
サイクロンの方が発動速度が速く、10頭を巻き込み竜巻が巻き起こった。
これだけだとダメージが分散するため、全頭生き残っている可能性がある。
遅れて少し、竜巻に炎雷が巻き込まれた。
ゴオォォォォ
ズドゥゥゥゥン
パリパリ……。
炎雷を巻き込んだ竜巻は真っ赤に燃え上がり、目論見通りのファイアーストームになった。
ただし、あまりの高熱のため、稲妻が超反応してプラズマ化してしまったという不具合があったけど……。
「なぁ、これ、まずくないか?」
現在、高熱を伴った稲妻と高熱を放つ竜巻が森を蹂躙しています。
特に、生木がプラズマに焼かれて激しく燃え上がっているんです。
「ええっと、そろそろ効力尽きると思うから……」
さすがのボクもこれは予想外。
「軽い災害ですね。街中ではやらないでください。崩壊しますから……」
口を開けてポカンとしているアニスさんが、やんわりと注意してくる。
うん、気をつけよう……。
そして、すべてが終わった後、森には大きな空間が出来上がっていた。
森の中の休憩所的な感じで……。
「あっ、レベル上がった」
そしてボクはレベルアップのお知らせと共に、この事実から目を背けることにした。
「俺も上がったし、合流するかぁ……」
何気にアーク兄も上がったようで何より。
残りの依頼はウルフ20頭の討伐だけだ。
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