第1話 サプライズ
午前六時三十分。私は、朝日を浴びようと窓を開けた。今日も良く晴れている。
毎朝のように祈りの歌を歌い終え、シスター達の手伝いをする。
「メル、洗濯物をお願いします。」
慣れた手つきで洗濯物を干していく。向こう側から駆け寄って、私にぎゅっと抱き着くのは、いつも遊びに来る子ども達だ。
「メル、一緒に遊ぼうよ。」
「私も手伝う~。」
「ねえねえ!この間ね……。」
子供たちが我先にと、一斉に話し出す。
「ほら、みんな。メルが困っているでしょう。今日は明日に向けて、みんなで飾り付けをしましょう。」シスターがそう言うと、子ども達の意識はそっちに向いていった。
少し困っていたのは確かだが、決して嫌いなわけではない。むしろ、シスターのように色々話したり、遊んだりしたいと思っている。しかし、どうしても昔から、感情表現が苦手なのだ。それに、あまり話さないこともあって、よく勘違いされる。さっきの子ども達は、初対面の時にシスターからその説明を受けているため、こんな私にも話しかけてくれる。
自屋に戻り、出掛ける準備をする。今日は、私の唯一の友達へのクリスマスプレゼントを買いに行く。そう、明日はクリスマス。サプライズで用意してある招待状とプレゼントを、受け取ってくれるだろうか。
町を赴くままに歩いてゆく。けれど、何も思いつかず、とりあえずお気に入りのいつものカフェへ入った。いつも注文するプリンパフェを、いつもの席で食べながら、何がいいかしら、と思考を巡らせる。
私の唯一の友達――クラリッサは、教会の近くにある湖の妖精だ。私が教会に来たばかりで馴染めずにいた頃、よく教会の周りを気晴らしに歩いていた。その時に出会った。妖精だと言うので、いたずらをされるかと思いきや、クラリッサも私とよく似た性格で、一人だった。だから、自然と仲良くなり、一緒にいる時間が増えていった。何も話さず寄り添い合うのがほとんどだが、そんな時間が愛おしいものになっていた。
ただ、最近はサプライズを用意していることや教会のことで忙しく会えていない。そう言えば、黄色い花が好きだと言っていたっけ。
プレゼントは、黄色い花のアクセサリーにしようと決めた。
「早く会いたいよ、クラリッサ……。」
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