第14話「うちのティザンに変なことしないでくれますか!?」
数分後、戻ってきたゴビーの体の色は普通の肌色に戻っており、えらく
「全く、逝くのは良いとしても、その後に戻るっていうのはどういうことだいッ!せっかく金色が楽しめると思ったのにッ!!」
僕に対して
「完全に不良品を渡してくるとはッ! これだから個人での薬は当てにならないんだッ!!」
僕が反応せずとも愚痴を続けるので、独り言なのだろう。
ゴビーはその後もぶつぶつ言いながら、薬の開発者に向かってレポートを送りつける。
「さて、ティザンくん、待たせたね」
ゴビーはようやくメガネを頭に上げると僕の話を聞く体勢に入った。
「それじゃ、こっちの話だけど、今回はゴビーの体が目的じゃなくて、転移時の魔法陣がでるエフェクトを変えるアイテムってあったりしない?」
ゴビーはハッとした表情を一瞬浮かべてから、今度はニヤリと不敵な笑みを見せた。
これは何かあるのかっ!?
僕がそう感じていると、いきなりゴビーは胸を押し当てるように僕の腕に絡んできた。
「え、ええっ!? いきなり何っ?」
「その話なら向こうでゆっくりしよう!」
耳元でねっとりと囁く言葉に、僕は悪寒を覚える。
「今まで、場所を変えるなんてしたことないでしょ! 何すんのっ!?」
なんとなく、僕の危機管理能力が
その時、まるで地獄の底から響くうめき声のように恨みがましい声が僕の背中へと刺さる。
「ティ~ザ~ン~。その女誰よッ!!」
僕は聞き覚えのある声にゆっくりと後ろを振り向く。
そこには屋上への扉を
その瞬間、先ほどのゴビーの表情の変化に納得がいった。
こいつ、僕を追ってきたニョニョの姿を見つけたから急にこんな態度をッ!
きっと困惑する僕とニョニョを見て楽しんでいるなッ!!
だけど、こちとらCTG内で
女性一人のホールドを解くくらい訳なんてない!
僕は掴まれた腕と反対の腕に力を込め、そのままゴビーの腹部目掛け振りぬいた。
PK禁止のシステムにより、僕の体はゴビーをすり抜け、距離を取ることに成功する。
「むぅ、せっかちだな。そんなにボクに入れたかったのかい?」
「いや、入れる気はさらさら無かったよ! というか普通にあなたから逃げる為だよッ!!」
そんな僕らのやり取りを見て、何を思ったのか、今度はニョニョが僕の腕を取る。
よくある、ライトノベル的展開だと、誤解だっていうのは分かってもらえず、殴られたり、爆破されたり、噛まれたりするのだろう……。
ゲーム内でそれは出来ないけど、残念ながらリアルで
僕はその後に待ち受ける運命を想像しゲンナリする。やっぱりニョニョは会わせるべきでなかったな~。
「ちょっと、うちのティザンに変なことしないでくれますか!? さっきまでの会話を聞くにアタシに見せつける為にわざとやってますよね?」
おおっ! 流石ニョニョ! ちゃんと冷静に物事を見ているッ!
いついかなる時でも客観視できるのはニョニョの才能だと言ってもいいだろう! そうじゃなきゃ新たな仕事、VRMMOでの探偵に値段をつけるなんて出来ない。
会わせるべきじゃなかったなんて思ってごめんッ!
「女とイチャ付いてる所を見せて、アタシ達の反応を楽しもうって腹だったんでしょうけど、残念ね! ティザンは臭いフェチだからVR内で女になびくことはないわ!!」
ズバンッ! と効果音が響きそうな勢いで言ってのけるけど······。
「まだそのネタ引っ張るのッ!?」
僕は心の底から叫んだ。
「そうだったんだ。これは完全にボクのリサーチ不足だったようだね。大人しく負けを認めるよ」
ゴビーはニョニョに向かって手を差し伸べると、二人は固い握手を交わした。
もう、どうでもいいから本題に入らせてくれないかな!
※
ようやく本題に入ることが出来そうになり、僕は改めて、魔法陣のエフェクトについて訪ねた。
「結論から言うと、そういったアイテムは存在しない。転移に限らずだ。そもそもエフェクトを変える事が出来たらすぐに上級者プレイヤーの間で話題になるだろ?」
「た、確かにその通りだと思うよ。スキルとかのエフェクトが変えられたら、防御・回避の難易度がグンと上がるからね。でもそうとしか思えない方法で僕らを掻い潜っているんだ」
ゴビーは唇に指先を当て、代替品が無かったか記憶と記録を見ている。
「もう少し詳しく、状況を説明するよ」
少しでも代替品を見つけやすくする為、僕は事件のあらましを人物を伏せて説明する。
「なるほど、ようするに魔法陣を発生させずに転移するか、逆に魔法陣を発生させてチャンネル移動出来ればいいわけだ。前者はさっきも言ったとおり無いけど、後者ならこれで代わりが利くんじゃないかな?」
ゴビーから渡されたのは、レアモンスターを逃がさない為の転移防止薬だった。
「ティザン、これは?」
「ああ、一部のレベル上げに時間よりお金を掛けるプレイヤーの間で使われているアイテムだよ。経験値アップと合わせて使うのが一般的で、経験値が美味しいけどすぐ逃げちゃうモンスターに当てて逃げられないようにするんだ」
「へ~、そんなアイテムがあるのね! アタシもなんとなく2人が考えていることがわかって来た気がするわ。でも本当に可能なの?」
僕とゴビーは顔を見合わせてから、少し笑った。
「ニョニョ、ここをどこだと思っているの? こんな試すのに打って付けの場所は他にはないよ。可能かどうかは今から試すんじゃあないか!」
僕はゴビーからそのアイテムを購入すると、一気にあおった。
待ってろよ、『青唐辛子』絶対に尻尾を掴んでやるッ!!
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