第3章 Q.捕まえられますか? A.欺くなんて許せないッ!
第12話「絶対に証拠を見つけるよッ!」
今回の依頼人は、『にゃぽ~ん』さん。『にゃ』が付く名前の通り、ネコミミをつけた低身長の女性だ。
フリフリの付いた可愛い服、通称甘ロリな服装で装備を固めていることからも、このVRMMOでのプレイスタイルが
「それで、にゃぽ~んさん、本日は浮気調査ということでしたね」
ニョニョがいつものように会話を切り出す。
「そうなのっ! 彼の影響でこのゲームを始めたんだけど、最近、なんだか冷たくて。きっとゲーム内で浮気してると思うの。でも······」
浮気しているか分からないから、うちに相談に来ていると思うんだけど、なぜかにゃぽ~んさんは口ごもった。
「こんな事、探偵さんに言うのは気が引けるのだけど、実はわたしだけで後をつけた事があるの」
「結果はどうだったんですか?」
「彼は転送装置から街の外に出たみたいなの」
「それならただのレベル上げに行ったんじゃ?」
僕が口を挟むと、にゃぽ~んさんは首を横に振った。
「でもでも、何日経っても全然レベルは上がってないし、装備も変わってないのッ!」
んんっ? 確かにそれは変な話だ。レベル上げが目的ではなくてもレアドロップ狙いで冒険してても、レベルは自然と上がっていくものだ。
レベルが上がらないくらい低レベルのレア狙いならば、数日も頑張ればドロップしているだろうし、そうなっていないとなると、怪しさ満点だ。
「なるほど、分かりました。それではこちらで調査させて頂きます。つきましては料金なのですが――」
それからニョニョは料金の話に移り、話の内容からも時間とお金が掛かることを伝えた。
「う~ん、そんなにお金は使えないから、とりあえず3日間お願いするの」
「かしこまりました。では1日3時間の張り込み・尾行を3日間行い、随時連絡致します。確実に浮気の証拠を掴むとは断言しかねますが、全力を持って望ませていただきます」
ニョニョは
「少なくとも、転送先で何をしているかくらいは掴みますよ」
最後に僕も一言付け加えた。
こうして、僕とニョニョの新たな依頼がスタートしたのだった。
※
「あれがターゲットの『
先ほど、ログインしたのを、にゃぽ~んさんから確認し、早速僕らも張り込んだ。
今、僕の視線の先にはファーの付いた黒のコートに身を包み、にゃぽ~んさんとお揃いのネコミミをつけた男性が、迷う素振りも見せず転移装置へと進んでいる。
転移装置はこのコンクリートジャングルな街から外のフィールドをつなぐ唯一の場所だ。
転移装置にて外に出た後は自由に広大なマップを探索できるし、また、以前僕らがやったように一度行った場所なら
転移先で異性の誰かと落ち合って一緒に冒険するだけなら限りなくグレーな気がするが、別に浮気ではなく純粋にレベルが近い者同士で集まっているだけの可能性もある。
以前、ニョニョと張り込みをした際には、見逃さないように別々のチャンネルに別れたのだが、今回は転移先が目標となっているので、ニョニョと同じチャンネルにいる。
チャンネルは本来、混雑防止の為の
「フレンド同士の位置表示をオンにしておいてくれれば、楽な仕事だったのに」
ログインの連絡が着た際に思わずそうぼやく。
「ティザン、オンにされていなくて追跡できないからうちに依頼が来たんでしょ!」
それも、そうだ。だけど心情としては、位置表示を切っている時点でかなりクロなのではと思ってしまう。それだけで詰め寄ってもいいんじゃないかな?
そうしている間に『青唐辛子』は転移の魔法陣を浮かべて、魔法陣からの光が全身を包むとその場から姿を消す。
「ニョニョは作戦通り、低レベルのフィールドで上級者が欲しがるレアドロップがある場所を周って。僕はレベル上げに丁度いいフィールドを周るから」
「了解ッ! 見つけたらすぐに連絡するわ」
別行動をして、僕らは『青唐辛子』を追いかけた。
※
ザシュンッ!!
僕は転送先のフィールドで襲い来るモンスターをそこそこに倒しながら、『青唐辛子』を捜索するが、一向に見つからない。
「これは、ニョニョの方が当たりかな?」
僕は該当フィールドを一回りしてから、街へと戻った。
ニョニョはすでに先に戻っており、僕の顔を見て驚いていた。
「え? なんでティザンの方も見つからないの?」
「ということは、ニョニョの方も空振り!?」
まさか予想が外れたのかッ!?
「僕は色んなフィールドに、総当りで回ってみるから、ニョニョはここで転送装置を見張っててッ!」
それから3時間経過するまで僕はありとあらゆるフィールドを駆け巡ったがとうとうターゲットを見つけることが出来なかった。そろそろ時間ギリギリというところで、ニョニョから連絡があった。
『青唐辛子』が転送装置から戻ってきたそうだ。
いったいどうやって僕らの目を掻い潜ったんだ?
ニョニョが信用出来ない訳ではないが、自分の目でも戻ってきた『青唐辛子』を確認したくて、急いで戻った。
僕が戻った頃、丁度目の前で『青唐辛子』は涼しい顔をしながらログアウトするところだった。
ギリッ!
僕は悔しさで歯を
浮気をしたかはともかく、このゲームで僕を
ニョニョもニョニョで騙されるのがキライな性格なので、無言で立ちすくんでいるが、リアルではメラメラと闘志を燃やしているのが手に取るように分かる。
「ティザン!!」
「うん。絶対に証拠を見つけるよッ!」
僕らは決意を新たに張り込み2日目へと挑戦する。
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