第2章 Q.気づいてくれますか? A.必ずッ!!
第9話「ちょっと気分が悪いので、保健室に行ってきます」
「ティザン、あのニョニョって女はそうとうやり手だな。シャット・ザ・ドア・イン・ザ・フェイスが全く通用しねぇ!」
「シャット・ザ・ドア・イン・ザ・フェイスって想定したラインに落とす為あらかじめ高い要求を出すってやつ?」
「ああ。それだ。向こうが初め5000円って言って来たから、3000円くらいならいいかと思って1000円から交渉をしたんだが、あの女、びた
スティングは去り際に僕にそう言って去っていった。
ニョニョと初対面のスティングがそう思うのも無理はないか。
しかも、後に聞いた話しでは、値段交渉の時。フェニックスの卵での特殊イベントも田村さんから依頼が来たときに調べたそうで、噂程度には知っていたそうだ。そこからスティングが特殊イベント達成の為に僕を引き込もうとしていると直感的に察知した為、結構強気に吹っかけたらしい。
一見
あれは確か中学2年で、僕がまだ学校に毎日通っていた頃の事だ。
※
プレイヤー『ニョニョ』、本名、
男子から最も良く聞く声として、
「あれで胸があったら逆に声掛けられないよな! 微妙に弱みがあるのがグッとくるぜ!!」
そんな理由から告白されることがあとを経たなかったが、僕の知る限り誰かと付き合ったというのは聞かない。
誰かからモテるというのは反対にやっかみもそれ相応に負うということでもあった。
あの日は雨上がりの秋晴れで、湿度、気温ともに最高の昼寝日和だった。
昼休み中、僕は窓際の席で、いつもの日課のようにまどろんでいた。この寝てしまう直前の多幸感がたまらない! 僕が学校で最も好きな瞬間の1つだ。
そんなまどろみを邪魔するように女々の声が耳に入ってきた。
「あれ? アタシの体操服がない?」
3時間目は体育で、今はお昼休みも終わろうとしている。
まぁ、大方体育が終わったあと、どこかに置き忘れたのだろう。
僕は少しだけ気にはなったものの、睡魔の方を優先し、目を瞑った。
それから女々は休み時間をフルに使って探したがどうやら見つからないらしい。
6時間目も普通に授業に出てはいるもののどこか落ち着かない様子だ。
確かに、盗まれたのが体操服だ。
変質者なんかに盗まれてたら気が気じゃないよね。
そのとき、ふと、女々の頬に一筋の涙が
昔から女々は辛いことがあっても誰にも見せないようにしている。気丈に振舞ってはいても、こういうストレートなのは堪えるのだろう。
僕は板書の手を止めると、授業中にも関わらず、席を立った。
「先生。ちょっと気分が悪いので、保健室に行ってきます」
ウソは言っていない。確かに今、僕は胸糞悪くて、気分が悪いんだッ!
「ああ、君がそう言うのは珍しいな。いいぞ行って来い。一人で大丈夫か?」
僕は頷くと、ゆっくりと教室を後にした。
もちろん保健室には向かわず、一人になれるトイレへと向かった。
個室へと入ると、目を閉じて、今日の3時間目からの様子を思い出す。
※
確か3時間目の体育は男女別で女子はバスケ、男子はサッカーでそれぞれ、体育館と校庭だった。
そこでは女々は普通に授業を行っていたはずだ。男子の何人かが覗きに行って、「凛々しいッ!」という感想を漏らしていた。
万が一そこの時点で体操服が無くなっていたら騒ぎになっていただろう。
その後の休み時間は着替えで精一杯だろうし、4時間目もずっと教室にいた。
ということは昼休みか……。
あの時、女々はいつものように友達と食事に教室を離れていた。
体操服は袋に入って机の脇に引っ掛けてあるはずだから、誰でも容易に盗めるだろう。
男が女々の机に近づこうものなら、他の男子が牽制の瞳を光らせるし、目立たず盗むのは難しいんじゃないかと思う。
あとは女子か。
僕は脳細胞をフル回転させて、近づいた女子を思い出す。
「…………昼時だから、いっぱい居るに決まってんじゃん」
かなりの人物がそこら中を動き回る昼休み。
そんな簡単に犯人には辿り着けないだろう。
「良しッ!」
僕は決意を新たにトイレの個室から出た。
やっぱり僕に推理とか無理ッ!
この健脚があるんだ。総当りというローラー作戦に出ることにした。
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