第2話 探索

 床がコンクリートだからだろうか、俺たちが歩くと、「コツコツ」という音が周りの壁に反響して気味が悪い。

 1階の方を見て回るが、診察室と思われる部屋や看護師さんの居たと思われる部屋などがある。

 これだけ見ると病院と、あまり違いはない。

「おい」

 隆司が懐中電灯で上を照らすとそこには「霊安室」と書かれた札があった。

「ここは、止めようぜ」

 そう言ったのは、圭一郎だ。

「何だ、圭一郎、怖いのか?」

「ここだけは、やばいような気がする」

「なら、お前はここで待っていろ。怜と龍太はどうする?」

「お、俺は行くぞ」

 小心者の龍太は行くと言う。

「俺も問題ない」

 ここに残されても灯りがない。そっちの方が気味が悪いだろう。

「分かった、俺も行くよ」

 圭一郎も行く事になった。

 隆司が霊安室の扉に手をかけると、その扉はスッーと開いて行く。まるで、自動ドアのように人を招き入れているようだ。

 隆司は一瞬、強張ったように感じたが、それでも一番最初に部屋に入った。

 部屋の中には、ベッドが2つ置いてあり、それ以外には祭壇のようなものが、これも2つあった。

「何もないな」

 隆司が言うが、他の3人は何も声が出ない。

 隆司が部屋の中を照らすが、他には何も見当たらないので、その部屋を出て、2階の方に向かう。

 建物はコンクリート造りだったが、何故か階段は木で造ってあった。そのため、階段を上ると「ギシギシ」と音がする。

 2階に上がると左右に病室のような部屋が続いている。

「こっちから行ってみよう」

 隆司が右手の方に歩き出す。俺たちも隆司に付いて右手の方に向かう。

「コツコツコツ」

 コンクリートの廊下に俺たちの靴音が響く。

「ちょっと、待て」

 圭一郎が言ったので、全員が止まった。

「どうした、圭一郎」

「いや、俺たちって4人だよな。だけど、足音が3人分しかしないと思わないか?」

 今は止まっているので、足音はしない。

「またまた、圭一郎、そうやって場を盛り上げようとしているんじゃないか」

 隆司が笑いながら言う。

「はは、そうだぞ。もっと、それらしく言えよ」

 俺も気味が悪いが、自分でもそれを認めたくないので、隆司に同意した。

「そうか、気のせいかな。ゴム底だと音がしない場合もあるからな」

 圭一郎の言葉に皆が同意して再び歩き出した。今度は靴の音にも耳を澄ませている。

「「「「コツコツ」」」」

 4人の靴音がする。

「ほら、やっぱり4人の音がするじゃないか」

 隆司が止まったので、全員が止まる。

「コツコツ」

 全員が止まっているのに誰か一人の靴音がした。

「ギョ」

 口に出した訳ではないが、全員がそう思っただろう。

「今、遅れて誰かの靴音がしたよな」

 俺が感じたことを言う。

「反響だろ、反響」

 これも隆司が否定した。

「コツコツ」

 まだ、誰も歩いていないのに靴音がした。

「…、聞いたか?」

「ああ、確かに聞いた」

 圭一郎が俺の問いに答えた。

 隆司が持っている懐中電灯で周囲を照らすが、ただの壁があるだけだ。

「ギャー」

「何だ、どうした」

 龍太がいきなり声を上げたので、隆司が聞いた。

「そ、そこに何かあった」

 隆司が懐中電灯で龍太の指差す先を照らしたところ、雨水が漏れたような跡があった。

「これは雨水か何かのシミじゃないか」

「ほ、ほんとか。確かにそうみたいだ」

 龍太も、その壁のシミを見て納得している。

「幽霊の正体見たり枯れ尾花って、あるじゃないか、それだな」

 その言葉にさっきの靴音の話は、どこかに行ってしまった。

「さて、行くぞ」

 再び隆司を先頭にして建物の端を目指して行く。

 途中に部屋があるが、ほとんどが2人部屋になっており、ベッドが2つとベッドの近くに棚が備え付けてあるだけだ。

 どこの部屋も造りは同じで、既に人の居た形跡はない。

 部屋を出た俺たちに暖かい風が頬を舐めた。

「ギャー」

 叫んだのは龍太だ。

「龍太、どうした?」

「な、何か頬を触って行った」

「何を言っている。風が通っただけだろう。ほら、あそこの窓ガラスが割れているから、そこから風が入ったんだ」

 隆司が懐中電灯で照らした先に割れた窓ガラスがある。

「そ、そうか」

 龍太も落ち着いたみたいだ。

 建物の右側の端まで行ってみたが、特に変わった物はなかったので、今度は左側の端まで行ってみる。

 だが、こちらも右側と同じで、2人部屋があるだけだった。

「特に何もないな」

 隆司が言う。

「帰るか?」

 俺は一刻も早く、ここから出たい。

「3階はどうする?」

 言わなくても良いのに、圭一郎が言いやがった。

「そうだな、3階も見てみるか」

「せ、折角だからな」

 この意見に龍太も賛同しやがった。

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