学年別クラス代表戦

第32話休み時間

 襲撃事件から一週間が経ち、ほとぼりも治ったという事で襲撃事件後初めて、生徒に登校することが許された。


 そんな学園のあちらこちらで話題になっているのが、やはり百鬼夜行による襲撃事件だ。生徒の中に死者や重傷者はいなかったが、新しい年が始まってまだ一ヶ月ちょっとしか経ってない内にこれ程までに大きな事件が起きたのだから、話題にならない方がおかしいだろう。


 そして、その話題の中でも、最も多く話されていたのが百鬼夜行のリーダーである鵜島 誠吾を倒した人物についてだ。


「おはよっ♪」


「ああ、楽斗か。おはよう」


「おいおい冷たいじゃねえか、相棒♪」


「あんたのテンションが高すぎるのよ」


 朝から何故かテンションの高い楽斗に京也は疲れながらそれに答え、美桜が呆れる。朝は、強い人と弱い人に分かれるのだが、楽斗はかなり強い方なのだろうか。いや、それともただ単に普段のテンションが高くてこれが普通なのだろうか。


「それにしても話題になってんな、この前の襲撃事件の事♪」


「それはそうだろ、何せこの学園が襲われたんだからな。まあ、その中でも一番話題になってんのは凛だよな」


「そりゃそうだろ。何せ敵の大将を倒してるわけだからな」


 和葉の言葉に、泡島が賛成した。見てみると、薺の周りには沢山のクラスメイトが集まっているのが分かり、教室の外にもほかのクラスからの生徒が集まっていた。


「それにしても本当に良かったの? 手柄を凛様に渡しちゃって」


「おっ、なんだ。相棒の心配をしてんのか? 優しいな♪」


「違うわよ! 凛様だって変な手柄を欲しかったわけじゃないしこれだと京也も損するだけで誰も得をしないって事が言いたいの!」


「ええ〜本当かよ」


 少しふざけた楽斗に美桜が怒るが、楽斗はそれを全く気にも止めずふざけるのをやめない。もうわざと怒らせていると思えるほどだ。


「俺はいいんだよ。タビアの説明した時にもそれっぽい事言っただろ? 俺は目立ちたくねえんだよ。ていうかお前らもいいのかよ、俺なんかといて。今までお前らに隠し事して来たんだぞ」


「別にそんな事どうでもいいだろ、誰でも隠し事の一つや二つあるもんだぜ。俺だってある、何なら教えてやろうか?」


「あんたの秘密なんか興味ないわよ。隠し事があったからって何なの? あなたは凛様を守り、この学園を守った。それだけで一緒にいる理由は十分よ」


「まあ、私は最初からなんかあるなあとは思ってたけど。何か理由があるなら仕方ないだろ」


「そういう事だぜ相棒、あんま気にする事じゃねえよ♪」


「・・・・そうかよ」


 和葉達のその台詞に京也は少し嬉しそうにする。それもそうだ、泡島の言う通り、確かに人には一つや二つ隠し事があるものだ。


 しかし、京也の場合はそれとは少し違ってくる。京也の場合、隠し事をしていた云々よりも、その実力を隠して、和葉達を危ない目に遭わせたという方が問題なのだ。しかし、和葉、美桜、泡島の誰一人として自分達が危険に晒されたという事を言わない。それはつまり、彼らはそんな事気にせず、逆に京也にそんな事を気に病んで欲しくないのだ。そんな友人の心遣いに嬉しくならないはずがない。


「あっ、そういえばもうすぐあれだな♪」


「あれ? ああ、なるほどな。襲撃事件ですっかり忘れてたけどもうその時期が来たのか」


「ん? あれって何だよ」


 楽斗と泡島の会話に京也が疑問を投げかけるが、楽斗達はそんな京也に呆れた目を向ける。


「はぁ、相棒。ほんと相変わらずだな」


「相変わらずで悪かったな! で、何だよあれって」


 呆れられた事に少し怒りを覚えたのか、京也は楽斗に向かって怒鳴った。


「年間予定表見てないの? ていうか見てなくても大事な行事なんだから普通は分かるでしょ。いい? もうすぐ学年別クラス代表個人戦の時期なの」


「へえ、で、何だそれ?」


「やばい、腹立って来たんだけど」


 美桜に説明されても全く理解できていない京也に美桜は腹を立てるが、京也はそんな事気にも止めていない様子だった。


「いいよ美桜、私が説明する。いいか京也、この学園には三つの大きな行事があるんだ、まず一つ目が六月に行われる学年別クラス代表個人戦、二つ目が十月に行われるクラス総力戦、そして三つ目が一月に行われる学園別代表戦、通称"総武祭"。私達が話してるのがこの中で一番最初に開催される学年別クラス代表戦。この行事では各クラスの代表五名が勝ち抜き戦をトーナメント方式でやるんだ」


「なるほどな、まあ、俺には関係のない話だ」


「いやいや、お前こそ関係あるだろ。あんな実力あるんだから」


「あの時も言った通り俺は俺の力を三年間隠し通すつもりなんだ、そんな大会には出ねえよ」


 京也は代表だ、と遠回りに言った泡島に対し京也は否定する。


「ねえ、前から気になってたんだけど何でこの学園に入ったの? 実力を隠す意味も分からないし、何よりこの学園に入る人って何らかの目的があるもんでしょ?」


「ああ、それはこの前薺さんにも聞かれたなあ。まあ、その時が来たら教えてやるよ」


「何よそれ」


 質問をはぐらかした京也に美桜は少し拗ねたが、それは友人として相手の事は知っておきたいという事から来たものなのだろうか。


「そんな事より次の時間って何だっけか?♪」


「確か第三競技場で個人戦の実戦練習だったはずよ」


「よし、そうと決まれば早く着替えて行くか♪」


 楽斗がそう言ったのと同時に和葉と美桜は女子の着替え室へ、京也、楽斗、泡島は教室で着替え始めた。

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