第31話襲撃後
「どうやら終わりましたよ」
『ああ、そうらしいね』
学園長室にいた度会は襲撃が終わったことを林道に電話で知らせていた。
「ここから見えたんですけど、何ですか? あれ」
『あれって?』
「はあ、分かってるくせにとぼけないでくださいよ。この前ここに来た氷室君の事ですよ、氷室君」
なぜかとぼける林道に対して度会は呆れながらも京也についての説明を求める。学園長室はちょうど正門が見える所にあり、そこから京也達の戦いが丸見えだったのだ。最初から見えていたのであれば助けに行けば良かったのではないかと思うが、林道の指示通りにしなければならなかったため、学園長室から離れられなかったのだ。
『ああ、氷室君ね。君は彼の事どう思う?』
「そうですね・・・・まず間違いなく、【一指】は彼でしょ」
『さあ、それはどうかな。その事について僕は何も言えないからね』
「あの身のこなし、そうとしか思えませんよ」
さらにとぼけ続ける林道に度会は反応する事なく会話を続ける。
「何でわざわざ隠しているんですか? 隠しても何の得もないでしょう」
『それも教えられないけど、彼にもそれなりの理由があるんだよ』
とぼけるのをやめたのか、林道は真面目に度会の質問に答え始めた。度会の真面目な雰囲気にとぼけ続けるのは耐えられなくなったのだろう。
「そういえば、隠してるなら模擬戦とかはどうするんですか? もし一回でもやったらバレちゃうでしょ」
『ああ、その点なら大丈夫だよ。学園の生徒に一人来れなくなった子がいるからね、そこにつけこんで不自然にならないように偽装はしてあるよ。まあ、この偽装の仕方だと逆に目立つとは思うけど実力がバレないなら彼はいいんじゃないかな』
最早京也が【一指】だという事を隠さなくなった林道は京也の順位について説明する。彼が言うには、この学園には一人、登校できなくなった生徒がおり、それを利用して京也の順位をごまかしているらしいのだが、一体どのように誤魔化しているのだろうか。
「はあ、まあいいですよ。僕的には学園対抗の"総武祭"にさえ出てくれれば。では、まだ仕事が残ってるので切りますね」
『ああ、ご苦労様。仕事が終わったらゆっくり休んでくれていいよ』
「僕は何もしてませんけどね。では」
『ああ』
『プツン』
電話を切った度会はスマホを外ポケットに入れながらゆっくりと学園長室から出て行った。
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その空間はタビアで作られた、前鵜島と若い男が対峙していた場所だった。その空間の中で鵜島と対峙していた若い男と何かの重鎮と思わしき、顔を隠している人物が五人、向き合っていた。
「どうやら鵜島 誠吾は失敗したようです」
「そうか」
「ある程度期待はしていたんだがな」
「まあ、所詮はテロリストと言った所か」
「これで計画も振り出しか」
「何、また一から始めればいいもの」
若い男の報告に、重鎮と思わしき人物はそれぞれ意見を述べる。
「ですが、鵜島を見張っていると一つ収穫もありました」
「ほう、収穫とは?」
「はい、あの実験体が生きていました」
「何と!」
「それは!」
若い男の報告に重鎮と思わしき人物は興奮し始めた。それほど京也が生きていたことが嬉しいのだろうか」
「てっきり
「はい、どうやら生き延びていたようです」
「だが大丈夫なのか? おそらく我々に復讐しようと考えていると思うが」
「そうだな、一応警戒しておいた方がいいだろう。
「はい」
日下部と呼ばれた若い男はお辞儀をしながら返事をした。
「これにて報告会は以上とする。日下部、もう下がって良いぞ」
「はい」
そう言われた日下部は後ろを向き、そのまま歩き出し、空間から姿を消した。
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