第10話集団戦闘①
「おいおい、嘘だろ」
自分のペアを見ながら、京也はそう嘆く。長髪は綺麗に揃えられており、顔も整っていて、絶世とまではいかないがかなり綺麗な少女。そう、薺 凛が京也のペアなのだ。
こうなったのには訳がある。まず、全員が動き始めた時、誰も薺に近づこうとしなかった。全員、薺の足手まといになるのが怖かったのだ。
一方、京也は最初から楽斗と組むつもりだった為、楽斗の方へ向かった。しかし、楽斗に話しかけようとした所、
「あ、悪りぃな相棒。俺もうこいつと組んじまったんだわ」
そう言う楽斗の隣には一人の少年が立っていた。確か、昨日の自己紹介で泡島と言っていた青年だ。
泡島も京也の方を見て、軽く手を挙げた。
(楽斗テメェ、わざとだろ)
京也はそう思いながら、他に空いている人がいないか探したのだが、探しても探しても空いている人などいなかった。代わりに居たのは、一人で何をすればいいのか分からずにいた薺ただ一人だった。
クラスの人気者がただ一人佇んでいるというなんとも言えない状況を見て、あの状態はいいのかと和葉の方を見たら、それに気づいた和葉が、
「ま、頼むよ」
と言い、その京也と和葉のやり取りに気づいた楽斗も、
「おっ、相棒これは仲良くチャンスなんじゃね♪」
お前らは組んでいたのかと言いたいぐらい清々しい二人に京也は少しイラッとしたが、先程怒られたばかりでまた面倒事を起こしたく無いと考え、仕方なく薺と組むことにした。
それでこの状況が生まれた訳だ。
「その、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく」
昨日の事もあるため、京也としては正直気まずい所だ。
おそらく和葉は最初から薺と京也を組ませるつもりで、楽斗の方はタビアを使って和葉と京也の会話を聞いていたのだろう。
一方、和葉と組んでいる美桜は物凄い形相で京也の方を睨んでいる。先程、和葉には薺を頼むと言われたが、美桜は和葉と意見が異なるのだろうか。
「よし、全員分かれたな、それでは集団戦闘を開始する。一組ずつこの台の上に立て」
そう言い若宮が指したのは地面に置かれた、妙に機械的な形をした丸い台だ。よくSF映画で見る様な形をしており、正直興味が湧いてくる雰囲気がある。
しかし、それが何かまだ知らされていない生徒は誰もその台に近づこうとしなかった。確かに興味が湧くが得体の知れない物には近づきたく無いのだ。
「ああ、言うのを忘れてたな。これは言わばテレポート装置だ。この台に乗ればこの競技場のランダムな所に飛ばされ、そこから戦闘開始という訳だ」
(なるほど、じゃあ安心か)
生徒全員がそう思った。
そして本当に安心したのか、次々と生徒が台の方へ向かって行く。
「じゃあ俺らも行くか」
「はい、そうですね」
もうこうなったら仕方がないと諦めがついたのか、京也は普通に薺に話しかけた。
そして、二人の番が来て台の上に乗ったら台から脳へと直接女性の声が聞こえて来た。
『一年三組薺 凛、一年三組氷室 京也、確認しました。只今より転送します』
その後、二人をまばゆい光が包んだ、そして次の瞬間、二人の姿が台から消えていた。
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「それでは全員の転送が終わった為、今から戦闘を開始する。各々、好きな様に戦え」
アナウンスで会場中に若宮の声がそう告げた。
「それでは、始め!」
「さぁ、どうする?」
「そうですね、とりあえずタビアを把握している人を整理しましょうか」
「分かった」
若宮の始めという合図と共に、京也は薺に何をするかを聞いた。
そして、薺の答えはとりあえずタビアを把握するというものだった。タビアでの戦闘の場合、一番重要となるのは相手のタビアを把握する事だ。それは、それによって対応が根本的に変わってくるからだ。
「俺が把握してるのは楽斗だけだな。あいつのタビアは"
そう聞くと同時に京也は自分の把握しているタビアを話し始めた。自分は一人しか知らない為、たくさん知っていそうな薺の後では喋りたくないと判断したのだろう。
「能力は簡単に言えば音を操れるものだ。音を使って攻撃もするし、音によるドーピングやそれを応用したテレパシーで後方支援も出来るし、あとは遠くの音も聞き取る事が出来る。いわば万能型のタビアっていうやつだな」
「へぇ〜、意外でした。あの方ってタビアは結構万能な方なんですね、性格からしてもっとクセのあるタビアかと思っていました」
「まぁ、そうだな。だけどそれを本人の前で言うなよ」
「? 分かりました」
急に毒舌を吐いた薺にそれを本人の前でやるなと京也は言ったのだが、どうやら本人はそれが何を指しているのか、全く気づいていない様だ。
おそらく、天然から来たのだろうが、京也としても急に毒舌を吐いた薺が意外でたまらなかった。薺の性格からして、まさかそんな言葉が出てくるとは到底思わなかったし。まして、クラスの人気者がこんな事を言うのは想像が出来なかった。
和葉の話からして、薺は京也にある程度気を許しているのではないかという事も想像出来たが、まさか気を許すとこうなるとは、思いもよらなかったのだ。
「はぁ〜、まぁいいや。で、お前はどう?」
「っ、はい! 私が知っているのは三人です!」
お前と呼ばれて嬉しかったのか、薺はいい返事と共に説明を始めた。
「まずは美桜ちゃんです。あの子のタビアは"
「なるほど、その美桜が出した炎を和葉が操って攻撃するって事か?」
「はい……随分と物分かりがいいんですね。意外でした」
「っ、まあ、そうだな。たまたまだよ」
また毒舌を吐いた薺に京也は戸惑いながら適当に流した。
「それで、もう一人は?」
「はい、もう一人は佐伯さんと組んでいらっしゃる泡島さんです。あの方のタビアは"
「? なんでそいつのタビアを知ってるんだ?」
京也が当然の疑問を薺に投げかける。確かに、薺が泡島のタビアを知っているのには疑問があった。美桜と和葉は昔からの付き合いらしいからともかく、泡島はつい先日あったばかりのはずだ。そんな人のタビアなどどうやって知るのだろうか。
「あ、いえ。教えられたので」
「あ、なるほど」
至極簡単な理由に京也は拍子抜けした。
そしてそんな時だった、
「"
光の矢が飛んできたのは。
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