青葉と梨々花
CDショップからでたあたしは店の前のベンチに座って頭を抱えていた。
この後はもう帰る予定だったのに何故座っているかというと、絶望だとかそういうわけじゃない。いや、ちょっと困ったことにはなったんだけどね。
それはさっきのレジでの話だ。
『日野さん1人なんですか?』
レジの作業をこなしながらそう聞いてくる。
支払いが終わったあとならでていけるけど、作業と同時だと逃げられもしない。
『まあ、そうだけど』
『もう少しで今日のバイト終わるから少し話しませんか?』
何が目的かはさっぱりわからない。というか、記憶の中で顔しかでてこなくて名前がわからないその元クラスメイトはあたしにそう言ってくる。
そしてあたしもそこで断ればいいものなのにテンパってたんだろう。後、単純に時間がないわけじゃないのに断ることに罪悪感を覚えたのかもしれない。
『わかった。じゃあ店の前で待ってる』
その後に支払いを済ませてからベンチに座って頭を抱えているわけだ。
せめて名前だけでも思い出したい。そう思うもののなんにもでてきてくれない。
体育で組んでた友達でもないし、あたしと接点どのくらいあったんだろう。
そんな風に思い出そうとすること10分が立った頃、店ではなくその横の通路から彼女がでてきた。当たり前だけど普通の私服になってる。
光莉よりは暗い茶髪でバイト中はおろしてたみたいで髪型はサイドテールになっていた。
「ごめんね。またせちゃいましたか?」
「ううん。大丈夫」
「それじゃあ……ちょっとお茶でもしながら話しましょう」
彼女はそう言うと目的地を頭の中で決めたようであるき出した。あたしは特に逆らわずその後を追う。
付いていくとショッピングモールの外に出て近くにあった個人でやってそうな喫茶店にたどり着いた。
「こんにちは」
「おや、いらっしゃい」
「2人です」
「どうぞ、ご自由な席に」
知り合いなのか自然な流れで席につかされる。
「わたしは紅茶でお願いします」
いつものと言わんばかり。
「え、えっとじゃあ、あたしはブレンドで」
「かしこまりました」
さて、注文が終わったところで再びあたしの脳を回転させよう。
「ところで、わたしのこと覚えてますか?」
「えっ?」
「いえ、話しかけたのは良いんですけど。わたしと日野さんって接点らしい接点はなかったので」
どうやら記憶は正しかったらしい。
「ごめん。クラスが一緒だったのしか覚えてない」
正直にいってくれたし、隠すよりも白状したほうがいい人な気がする。あたしは嘘偽りなくそう伝えた。
「ですよね。わたしは
「そうだったんだ」
「そうなんです。でも、ずっと話してみたいとは思ってたので、さっきは突然だったけど誘ってしまって」
「ううん。大丈夫。どうせあたしもあの後は予定なかったから」
まさか午前中に尾行してたとも言えないしね。
何となくそうやってお互いの自己紹介をしたところで、注文した飲み物が届いた。
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