CDショップと不意な出会い
特にこれと言って特別なこともなく時間は過ぎていき、気がつけばお昼になっていた。
2人は昼食にフードコートの方に行ったみたいだけど、流石にあそこだと隠れる場所がない気がする。まあ、変なことは起こらなそうだしもう帰ってもいいかな。
あたしはそう思って一先ずその場を後にした。
しかし、案外体は正直で昼食はこのへんで食べて行けと主張してくる。
「ここで1人で食べられそうな場所あったっけ」
あたしはエスカレーター付近にある店内マップを眺めてみる。
意外と入れ替わりが激しいから、知らぬ間に店がなくなったり増えてたりする印象を持ってるからだ。特に普段は行かない場所の店とかだと気が付きにくい。
「うーん。ここは家族連れが多いと思うし、この辺も日曜だから混んでそう」
あたしは結局全国チェーンの麺屋にしようと思ってショッピングモールを後にする。
このショッピングモールの麺屋はフードコートとは別でちゃんと一店でだしていて学生でもお手頃価格だ。
あの2人もわざわざこの後に、麺屋に来たりまじまじ覗いてくることもないはず。
あたしは麺屋まで移動してから山菜そばを食べる。
「うぅん……このまま帰るのもあれかも」
よく考えたらいくら近くて安いとは言え電車賃払ってここまで来た。このまま2人の後を追ったという行動だけして帰るのもおかしな話だ。
そんなことを考えているとうどん屋のBGMとしてテレビドラマの曲が流れていルノに気がつく。
「そういえば、先週にあのバンドのアルバムでたはず……」
買おうと思ってたけどゲームやってたのと、優先度は申し訳ないけど高くないバンドだったから忘れてた。せっかく来たし買って帰ろうかな。
「ごちそうさまでした」
あたしは食べ終わった器とおぼんを返却口に返してからモール内のCDショップに移動する。途中で不意に去年のクラスメイトとすれ違ったけど、バレてないか気にもされずに済む。
多分、服装のイメージも変えられているんだと思う。
あたしがCDショップにたどり着くと普段よりかは混んでいた。
新発売のコーナーのところでアルバムを探していると途中でカップル2人が試聴してる場面に出くわしてしまう。
このお店の試聴は自分が持ってきてるイヤホンとかヘッドホンでもできるようになっていて、よくある一つのイヤホンで2人で聞いてる感じになってる。
ただ、いつもあたしが思うのはそれをやって何かが深まるのかわからないということ。
最近に限らずだけど音が左右に割り振られたりしていることもある。つまり音楽を楽しむならカップルのあの聞き方は違和感だ。ただ、距離が近くで同じに近いものを共有するっていうことが目的だと頭では理解している。
理解はしているはずなのにわからない。
あたしは目的だったアルバムを見つけて軽く試聴してみた。別に買ってから家で聞けばいいんだけど、そんな気分だった。
「……あれ、今回はバラードも作ったんだ」
普段は3ピースのロック系のバンドだけど、少し聞いてるとアコースティックギターの音が目立つラブソングが流れた。
「落ち着いた声も結構いい感じ」
あたしは改めてアルバムを買うことを決めて手に取る。そしてレジにやってきた時だった。
「あれ、日野さん?」
「うん……あっ」
流石にレジカウンターだけを挟んだ近距離だとバレてしまうようだ。そこには去年のクラスメイトの女子がCDショップの制服を着て立っていた。
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