ギターとキーボード
時間はあっという間に過ぎていき気がついたら土曜日になっていた。
ライブは夕方だからということもあって集合するのも午後だけど、むしろ午前中そわそわして仕方なかった。
「はぁ……らしくない」
さすがに今回は行き先がライブハウスだから服装に悩むことはなかった。
ただ、軽くアクセサリーとか何をつけるかぐらいは悩んだあたしがいて、前までなら絶対につけないか即決していた。
結局はこの前に買った音符のヘアアクセを軽くつけてくるだけに収めた。
時間的には集合時間より30分早くたどり着いてしまった。
「あれ? あおちゃんじゃない」
あたしが駅にある柱に寄りかかっていると声をかけられた。そっちを向いてみるとライブハウスで一時期バイトしてたお姉さんがいた。
「お久しぶりです」
「久しぶりー、元気だった?」
「まあそこそこは。なんでここに?」
たしか就職したって聞いてバイトを辞めてからは一度も会ってなかった気がする。
「ライブハウスでバイトしてた時に仲良くなった後輩の子が二十歳になったらしくて。初のみ付き合って欲しいって言われてね」
「こちの人ってことですか」
「そういうこと! あおちゃんは?」
「あたしは今日のライブ見る予定で、待ち合わせしてる感じです」
「へー。もしかして夏樹くん?」
「まあ、はい」
「やっぱりね。いやー、青春だね。私はこのまま飲み行くから行けないけど楽しんできてね!」
「はい」
「じゃあ夏樹くんと仲良くねー!」
ブンブンと手を降ってお姉さんは去っていった。
あのお姉さんはいつもこんな感じであたしと夏樹のこといってきてたけど、今考えるともしかしてそういうことなのかな。そういう誤解されてたのかな。
前までは単純に男女関係なしに仲がいい親友みたいな意味で仲良くって言われてたと思ってたんだけど。
その後、音楽を聞きながら待つこと十数分。予定してた十分前に改札からでてきた夏樹が見えた。
「あれ、またせたか?」
「まあ多少わね」
「いつもどおりの時間に来たんだけど。なんか行きたいとことか会ったか?」
「別に。ただそういう気分だった」
「そうか」
ここで待ってないとかいうやり取りもできたんだろうけど、夏樹にそんな事してもあんまり意味はなさそう。なにより、こういう仲がいいからこその多少の会話のほうが好き。
「でも、元々少し早いんだよな」
「そうだね。楽器屋見ていってもいい?」
「おっけい。ライブハウスの近くのあそこだよな?」
「そう」
互いに早めの夕飯とかも家で済ませてきている。あたし達は時間になるまで近くの楽器屋で時間つぶしするのは恒例といえば恒例だ。
楽器屋の中に入るとあたしは自分でやっているから迷いなく見るものが決まるけど、夏樹は演奏とかはしてないからフラフラと色々見る。
あたしはギターの弦の補充もしたいと思ってたからそのコーナーに向かう。
「これくらいでいいかな」
弦以外にも買うものを手にとってレジに向かう。
レジで会計をしていると、近くに置いてあるキーボードを夏樹は見てた。
「どうしたの?」
「うーん。いや、キーボードには少し興味あるなってな」
「そうなの? 初めて聞いたけど」
「ライブハウス来るようになってから楽器自体には憧れ持ってたんだけど、中学の頃にちょっとあったギターの授業の時点でコードとか理解できなくてな。でもキーボードならワンチャンと思わないでもないけどどうなんだろう」
そんな事思ってたんだ。でもギターのコードがわからなかったり、頭でわかっても実際にできないって話はよく聞く。あたしも最初はひどいものだったしね。
「まあ楽譜の読み方とか簡単な程度ならキーボード教えられるけど」
「マジか……じゃあちょっと考えてみるわ」
「うん」
流れで言っちゃったけど、ほんと多少しかできないから後で教本読み返しておこう。家に何故か買ったのが一冊置きっぱなしにしてたはず。
あたし達は時間になってから楽器屋を後にしてライブハウスへと足を向けた。
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