デートとは

 ゴルドンから更に西に行った陸に出来た岩のサンゴ礁にたどり着いた。遠目に体表の赤いトカゲモンスターなどが見える。


「あのモンスターが目的?」

「そうだよ。名前はそのまんまの【レッドリザード】っていうの。でも属性とかは特にないかな」

「火とかじゃないんだ」

「火属性がつくモンスターは大体マグマとかファイヤとかがつくから」


 このゲームは名前はストレートなモンスターが多い。むしろ自分で名前をつけられる武器とかのほうが色んな人のセンスでつけられててややこしい気がする。

 あたしはメイスを手に持っていつでも多々ける状態になってからゆっくり進む。ここらへんなら今日はマジックナイトできたからやられることはないと思う。

 実際にレッドリザード達と戦闘になったけれどあたしは前に立ってメイスで殴りつつ後ろからアオが魔法を飛ばしてくれれば話しながら狩ることすら可能な状態だ。


「そういえばヒカリ。放課後何話してたの?」

「え? なんのこと?」

「教室からあたしが出る時にちらっとナツのほうから話しかけてたのみたから」


 あの時見られてたんだ。いやまあ教室だから当たり前か。


「なんか、ナツくんのほうからライブに誘われた」

「ライブ?」

「うん。まあでっかいドームとかじゃなくてライブハウスのだけど。よく行く場所があってねー」

「デート?」

「デッ!? いや、そういうんじゃないと思うけど。最近はゲームとかもやってて行ってなかったけど、去年はわりと二ヶ月に一回とか多ければ月イチでいってたから」

「つまり初デートじゃないってこと?」

「違う。そもそもデートじゃない……と思う」


 最近の自分自身の状態を考えると自信はもてないけど。


「少なくともナツくんはデートだと思ってないから」

「つまりヒカリは?」

「わからないかなー!」


 あたしは誤魔化すようにレッドリザードを叩き潰す。

 まあゲームだからグロはあんまりなく消えていくけど。


「というかアオはそういう経験あるの?」

「デート? あるけど」

「あるんだ……」

「自分がデートと思ったらデートだっていう考え方だから。それなら同性同士でも異性でもデートはなりたつ」

「そ、そうなんだー」

「つまり女の子同士で遊びに行くのもデートだと思えばデート」


 もしかしてデートの経験あるっていうのも、そういうただのお出かけを換算しているってことなのかな。


「だからもしもヒカリがデートだと思ったならそれはデートになる。初デートおめでとう」

「誰もそんなこと言ってないじゃん!」

「言ってなくても、あたしがこんなに言ってるからもう思ってるはず」

「ぐっ……」


 まさか最初からそれを見越してアオは言ってたのか。

 その後も色々と言い合いをしながらレッドリザードを絶滅してしまうんじゃないかというほどの数狩って、素材が予定の3倍ほど集まってしまった。

 ちなみに今日のゲーム終了時の結論としてあたしの土曜のそれは「デートである」ということになってしまった。


 まあ、そうなってしまってもあたしが意識しなければいい話のはずだ。それなのに、何故かあたしは土曜日に期待と不安を持ち始めてしまっていた。

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