第3話 双子が生まれた

 小高い丘の一軒家。庭にはハーブ類が植えられている。


 「「!!!」」


 その家で双子の女の子が誕生した。姉の方は母の髪色を受け継いで金髪、妹の方は父の髪の色を受け継いで黒色だった。


 「オンギャー!!!(誰じゃ!わしを起こすのは!)」

 「オンギャー!!!(メンテナンスオイル排出!)」


 「あなた!私たちの子が生まれました!!」


 うん。本当だったら、でかした!とか言って飛び込むのだろうけど…子供たちから有り得ない言葉が聞こえています。

 思わず、まじまじと丸眼鏡越しに双子の様子を確認してしまう。


 「あなた?」

 「あー、うん!でかした!」


 「先に生まれたこの子がネラ!アアのこの子がアイ!」

 「おやおや。もう、決めっちゃったのかい?僕の意見は聞かないのかいハニー?」


 「フフフ。恋人気分もいいけど、子供を授かったんだから、しっかりしなさいよ。」

 「あ!先生、この度は妻の出産。ありがとうございます!」 

 「よいよい。私は病院のほうにいるから、何かあったら直ぐにくるのよ。ヒールしに直ぐに駆けつけるから。」

 「はい!」

 「2、3日は安静にするのよ。それじゃーね。」

 「「ありがとうございました!!」」


 この村唯一の医師は、疲れを飛ばすようにうぐぐぐっと犬型の耳としっぽを大きく蹴伸けのびをして、朝靄のなか悠々と病院へと去っていく。


 「ところで、本当に俺の子だよな?」

 「あ、、、あなたっ!!!!!!」

 「いや、そういう意味じゃっ…。」


 育児放棄ととらえられても仕方がないような言葉をしたのにはわけがあるのだが、それを説明していいものかどうか…。


 「オンギャー!!!(うるさくて、眠れないのじゃ!)」

 「オンギャー!!!(特殊空間でしょうか?音声情報らしきものを確認!)」


 俺たちの子、何かしゃべってます…。


 庭では双子の声に反応するかのように囲いのフェンスの下に小さな小さな植物が芽吹いた。

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