第2話 プロローグ妹

 最後の希望は、何億回も宇宙の端を行き来していた。


 最後の希望。それは最終決戦兵器ワールドアンカー。超巨大惑星なみの巨体に宇宙をささえる鎖を何億本も生やしている。


 『アンカー射出。』


 ズドーンッ!!!!


 射出されたアンカーは存在空間の壁を突き破り、非存在空間に突き刺さる。


 この世界の宇宙は物質が多すぎるため広がり続けていた。広がり過ぎた宇宙もまた存在が薄くなり、ガラスが割れたようにバラバラになり非存在空間に飲まれていく。


 知的生命体の英知の結晶であるワールドアンカーは広がりバラバラになる宇宙をとどめるため、永久とも思える作業をただ1体・・でこなしていた。


 『次の宇宙の破片に移動します。』


 ピピピッ


 『負荷が限界値に達しました。本部へ打診します。』


 遠の昔に滅んでいる知的生命体へ無意味な報告を飛ばす。滅んでいるなんてことは既にづいている。限界を超えて作業をしていたワールドアンカーにピシィと亀裂が走ると砕けたガラスのようにバラバラになり非存在空間に飲み込まれる。宇宙を支えていワールドアンカーが砕けて消えていくと宇宙も瞬く間に非存在空間に飲まれてしまった。


 そして、最終決戦兵器が気づいたときには、ドクン。ドクン。と耳に優しいリズムを刻む優しい赤と黄色の光をたたえる水の中であった。


 『光を確認。宇宙の救出に成功。稼働限界のため最後の打診とします。』


 宇宙を支えていた最終決戦兵器だった何か・・は、体すっぽり優しい温もりにつつまれて眠りについた。


 優しく抱きついてくる何か・・とともに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る