二十六歳の独身女性の独白に、丁度いいファンタジーがまぶしてあって、とても心地よく読みました。人の顔をずっと窺ってきた彼女が、初めて愚痴をこぼした相手の正体が分かった時に、どうしようもなくテンションが上がりました。ほろ苦くて大人の味わいながらも、童心に素直に帰れるようなお話です。
クリスマスも過ぎた12月26日。売れ残ったクリスマスケーキと自身を重ねて、公園のベンチで一人気落ちする女性がいました。けど、そんな彼女の話を聞いてくれる男性がいて……クリスマスと言うと華やかな雰囲気ですけど、このお話は苦みと切なさに彩られていて。だけど読み終わった後、温かい気持ちになれました。もうサンタクロースなんて信じていない、昔みたいにクリスマスを楽しめないという大人にこそ、読んでもらいたいお話です。
華やかなクリスマス……そして売れ残るケーキやグッズ。たった一日。されど一日。そんな売れ残りに自分を重ねてしまう女性の話に耳を傾ける男性。彼がね……言うんですよ、かっこいいことを。で、女性もね。また、いいこと言うんです。全体に流れるシックで大人びた雰囲気には、星の綺麗な夜空が似合います。サンタさん。そのちょっとした切ない秘密も明かされる。ほろ苦く、それでも甘くて元気が湧いて来る、クールな作品です。