第4話 初めての願いごと
帰宅した。
「お帰り、春くん」
「ただいま、お姉さん」
「学校どうだった?」
「まだ、わからん」
ありきたりな会話をする。
「クラブは入らないの?」
「入らない」
「運動部は?」
「僕には才能ないし、練習についていけない」
「文化部は?」
「よさそうなのがない」
「わがままだね」
「ほっとけ」
「じぁあ帰宅部なんだ」
自分で作りたいクラブがあるとは、言えなかった。
「お姉さん、食事やお風呂はいいの?」
「この中で出来るよ」
「願い事を叶えるのは、お姉さん?」
「私は代理人、願いを叶えてくれる人はいるよ。まあ上司かな」
「そっか・・・」
安心した。
このお姉さんは、頼りない。
「そうそう、代償と言っても命まではとらないからね」
「わかったよ」
部屋着に着替える。
鞄の中に明日、必要な物を入れる。
「ねえ、春くん」
「何?」
「可愛い女の子いた?」
「男子校だ」
「残念ね」
いても、僕には出来ない。
「それと春くん」
「何?」
「願い事だけど、死者を生き返らせてくれとかもだめよ」
「死は、自然なものだから?」
「わかってるね」
もっとも、それは願う気はない。
「お姉さんの名前は、トレアだったよね?」
「うん」
「どういう意味?」
「花のカトレアだよ」
「どうして、カを取ったの?」
「私の上司が、『お前は女らしさが足りない』と、カを取ったの。
おかしいよね?こんなに女らいいのに」
その上司の判断は、正しい。
「お姉さん」
「何?」
「最初の願い事だけどね」
「うんうん」
「そこから出てきてほしい」
もちろん冗談だった。
却下されると思っていた。
「わかった。上司に頼んでみるね」
お姉さんの独断では無理のようだ。
でも、もし出てきたら、あの漫画みたいになるな。
「OKだって。なら、すぐに出るね」
「なぬ」
そういうと、お姉さんは水晶玉の中から現れた。
「あらためまして。トレアです。よろしく」
「よろしく」
代償は、水晶玉が壊れた・・・
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