後編

 それからというもの、アルはそんな感じでのらりくらりと穂乃香との『契約』を避け続けた。

 ちなみに穂乃香の強引な説得により、両親はアルを飼うことを認めさせられている。


「ねぇ、アルくん。『星の巡り』っていうのは一体いつになったら良くなるの?」

「あはははははは、いつかなぁ?」

「アルくん、本当にわたしを魔法少女にしてくれるの? むしろ魔法少女がいなくてこの町は大丈夫なの?」


 さすがにアルもこれ以上は誤魔化せないと悟ったようだ。

「穂乃香……実はボクが君の前に現れたのは、単にお腹が空いていて助けて欲しかったからなんだ」

「え?」

「つまり、もともと魔法少女にするつもりなんかないというか……ほら、ボクの精神感応通信テレパシーをしっかり受信できた時点でけっこう才能あるっていうか? ある意味すでに魔法少女? もっと上手うまくなりたかったら練習すればいいんじゃないかな?」

「え? 変身は?」

「アニメの見過ぎだよ」

「じゃ……じゃあ、敵は?」

「それもアニメの見過ぎだよ。こいつを倒せばすべてが丸く収まる――そんな都合のいい悪役は現実にはあまりいないんだ。そもそも、価値観も善悪も時代SCENEによって変化するものなんだよ」

「ふぇえええ、そんな難しい話よくわからないよう……」

「考えるのをやめちゃ駄目だ! この世界に本当の悪があるとすれば『思考停止』なんだよ」

「わたしはどうすればいいの……」

「それを考えるんだよ! 10年、20年かかっても、穂乃香なりの答えを見つけるんだ!」

「わかった、わたし考える!」

「その意気だ! じゃあ、ボクはまた寝るよ。おやすみ……惰眠こそ絶対正義、空腹は絶対悪……むにゃむにゃ」

 そうして、アルは再び惰眠を貪りはじめた。

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魔法少女になる方法 森野コウイチ @koichiworks

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